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[GDO、社内システム 刷新への道]

GDOのG10プロジェクトが終盤に、社内に温度差残しつつ稼働へ

同時進行ドキュメント!GDO、社内システム刷新への道 Part14

2011年7月13日(水)IT Leaders編集部

2011年5月末、G10プロジェクトはユーザー受け入れテストを完了。仕様変更やバグ修正を含むプログラム改修を凍結した。プロジェクトが終盤に差し掛かった今、推進チームは難題に直面している。データ移行と、システム活用の促進という質の異なる問題だ。

大規模一括バッチに挑む

G10プロジェクトも終盤戦。大きな難関となっているのは、データ移行だ。周知のように、一口にデータ移行と言っても、単にデータを移し替えればいいわけではない。新・旧システムでデータの整合性がとれているかどうかをチェックする、新システムにデータを投入し、正しい処理結果が得られるかを検証する─。データ移行には、こうした神経を使う作業が数多く付随する。わずかなミスが、移行失敗や遅延といったトラブルを引き起こしかねない。

リスクを最小限に抑える手は打った。これまで実施した2度の移行リハーサルにおいて、業務の実データを順次、新システムに流し込んできた。これにより、「稼働時に一気に移行するデータ量を減らせた」(IT戦略室の志賀智之室長)。

しかし、それにも限界がある。会員マスターや商品マスター、ポイントなど、システム切り替え時にしか移行できないデータが存在するからだ。例えば、商品マスターは、移行直前まで増え続け、更新される。その数、実に80万アイテム以上。推進チームは、本番2週間前から差分更新を繰り返し、新システムのリリース直前には20万件を12時間以上かけて差分更新する。商品マスターとともに、受注残や在庫情報などのデータも移行しなければならない。SAPには商品マスター関連だけで800万件以上のデータが展開されると試算している。「通常業務で実施する週次や月次の処理とは、データ量のケタが違う」(志賀室長)。

取引先マスターも、切り替え時に移行するしかない。件数は数千件で増減は少ないが、移行前に名寄せや表記規則を統一しなければならないという別の問題がある。ECやゴルフ場予約、会計といった各システムの担当部門が、それぞれのルールに従って個別に作成・管理しているからだ。現在、これらをSAP ERPのルールにそろえる方針で、経理部門を中心に新たな表記ルールを策定中である。

結果として、移行時には大量一括バッチが発生する。G10にとって大きなチャレンジだ。推進チームは今、移行にかかる時間をさらに短縮すべく手順の組み替えを試行錯誤している。最終リハーサルでは、本番と同じ2日以内にデータ移行を完了させることを目指す。

データ保守専任の部署を新設

一方、推進チームは稼働後に起こり得るリスクにも目を向けている。1つは、データ品質の維持だ。大日健CIOは、企業の業務システムを食器、そこに蓄積するデータを料理になぞらえ、その重要性をこう語る。「当社は漆塗りの立派なセットを購入した。せっかくの漆器に、食べ物を入れっぱなしにして腐らせては台無し。ゴミを入れるなど論外」。データ品質を高めると同時に入力ミスや重複を防がなければ、情報活用という“ごちそう”にはありつけない。つまり、「精度の高いデータを経営判断に生かせる仕組み作り」というG10プロジェクトのそもそもの狙いを実現できないということだ。

では、データの鮮度と正確性をどう維持するか。議論の結果、データ品質を保つシステムや業務の仕組みを定義し、活用を狙う部署を新設した。名称は、情報活用推進部。システムに蓄積したデータの精度を高く維持するための仕組みづくりと、全社で情報活用できる基盤を構築することをミッションとし、志賀室長が部長を兼任する。

もう1つ、大日CIOや推進チームには気になる問題がある。

プロジェクトを開始して以来、大日CIOらは一貫して「これまでの業務慣行(as is)にこだわらずあるべき姿(to be)を追い求めよう」と言い続けてきた。それにもかかわらず、稼働直前のこの時期になってas is回帰する徴候が現れ始めた。「なぜこの機能がないんだ」「この部分が使いにくい」と、従来と同じ使い勝手を求める声が上がってきたという。

これまで、業務担当者は新システムを動かすことに集中してきた。それが、なんとかなりそうだと分かったとたん、ディテールに目を向けるようになったのだ。だが、「『3年後、企業としてこうありたい』という大局的なイメージがないまま『今、不便だから』という理由で機能面の不備をつぶそうとするのは危険。中長期戦略に沿って組み上げたグランドデザインに影響を及ぼしかねない」(大日CIO)。

こうした揺り戻しの原因は、社員1人ひとりの事業マインドだ。「当社にとって、新システムはこれからの10年を戦うための道具。G10は、単なるシステム入れ替えではない。そうした意識が、業務部門にいまだ浸透していない」(大日CIO)。そんな問題があっても、立ち止まってはいられない。新たな業務フローを、現場にどう定着させるか。稼働後、改めて推進チームの手腕が試されることになる。

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