2011年5月末、G10プロジェクトはユーザー受け入れテストを完了。仕様変更やバグ修正を含むプログラム改修を凍結した。プロジェクトが終盤に差し掛かった今、推進チームは難題に直面している。データ移行と、システム活用の促進という質の異なる問題だ。
大規模一括バッチに挑む
G10プロジェクトも終盤戦。大きな難関となっているのは、データ移行だ。周知のように、一口にデータ移行と言っても、単にデータを移し替えればいいわけではない。新・旧システムでデータの整合性がとれているかどうかをチェックする、新システムにデータを投入し、正しい処理結果が得られるかを検証する─。データ移行には、こうした神経を使う作業が数多く付随する。わずかなミスが、移行失敗や遅延といったトラブルを引き起こしかねない。
リスクを最小限に抑える手は打った。これまで実施した2度の移行リハーサルにおいて、業務の実データを順次、新システムに流し込んできた。これにより、「稼働時に一気に移行するデータ量を減らせた」(IT戦略室の志賀智之室長)。
しかし、それにも限界がある。会員マスターや商品マスター、ポイントなど、システム切り替え時にしか移行できないデータが存在するからだ。例えば、商品マスターは、移行直前まで増え続け、更新される。その数、実に80万アイテム以上。推進チームは、本番2週間前から差分更新を繰り返し、新システムのリリース直前には20万件を12時間以上かけて差分更新する。商品マスターとともに、受注残や在庫情報などのデータも移行しなければならない。SAPには商品マスター関連だけで800万件以上のデータが展開されると試算している。「通常業務で実施する週次や月次の処理とは、データ量のケタが違う」(志賀室長)。
取引先マスターも、切り替え時に移行するしかない。件数は数千件で増減は少ないが、移行前に名寄せや表記規則を統一しなければならないという別の問題がある。ECやゴルフ場予約、会計といった各システムの担当部門が、それぞれのルールに従って個別に作成・管理しているからだ。現在、これらをSAP ERPのルールにそろえる方針で、経理部門を中心に新たな表記ルールを策定中である。
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