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[GDO、社内システム 刷新への道]

同時進行ドキュメント!GDO、社内システム刷新への道 最終回―意思疎通からコンサル活用法まで「G10プロジェクト」の成功要因を聞く

2011年10月12日(水)IT Leaders編集部

2010年7月号から同時進行で追ってきた、ゴルフダイジェスト・オンラインのG10プロジェクトが、去る7月1日にカットオーバーした。異なるベンダーのIT製品を適材適所で採用し、1年半でシステムを全面刷新する野心的な取り組みを、中核メンバーはどう舵取りしたのか。成功の鍵を聞く。Photo:難波 毅

大日 健 氏
大日 健 氏
ゴルフダイジェスト・オンライン 上級執行役員兼 システム戦略担当(CIO)
1993年、日経BP社入社。メディアマーケティングや広告営業、Webメディアのインフラ整備などを手がける。2003年、シーネットネットワークスジャパン(現・朝日インタラクティブ)の立ち上げに参画。メディア開発や営業商品開発に携わり、2005年に社長就任。2008年、ゴルフダイジェスト・オンライン入社。メディア&モバイル事業責任者、システム部門担当執行役員、最高執行責任者を経て、2010年より現職。G10プロジェクトでは全体のPOを務めた。2011年4月、関連会社であるインサイトの社長に就任(兼任)。

 

渡邉 信之 氏
渡邉 信之 氏
ゴルフダイジェスト・オンライン システム部 部長
大手都市銀行の勘定系システム開発に従事。その後、携帯電話のメールシステムや金融系業務パッケージの開発に携わった。2003年ごろから、中規模以上のプロジェクトマネジメント業務に従事。2006年10月、ゴルフダイジェスト・オンラインに入社した。セキュリティ対応やJSOX対応をはじめとする数多くのプロジェクトをマネジメントし、2008年6月にシステム部長就任。G10プロジェクトではプロジェクト全体のPMを務めた。現在、開発・保守ノウハウを生かした新規ビジネスの立ち上げに取り組んでいる。

 

志賀 智之 氏
志賀 智之 氏
ゴルフダイジェスト・オンライン 情報活用推進部 部長
1993年、SRAに入社し開発業務に従事。その後、フリーランスとして雑誌編集やWEB開発、CD-ROM開発などに携わる。1996年から、ソフマップにおいて雑誌立ち上げやカタログ自動生成システムの構築、ECサイト刷新、新規事業立ち上げを経験。海外流浪を経て2006年、ネットイヤーグループ入社。WEBサイト再構築プロジェクトを多数率いた。2008年8月にゴルフダイジェスト・オンライン入社。IT戦略室長を経て現職。G10プロジェクトではマネージメントシステムチームのPMのほか、推進室のPM補佐を務めた。

 

中澤 伸也 氏
中澤 伸也 氏
ゴルフダイジェスト・オンライン マーケティング部 部長 兼 経営管理部 部長
1997年ソフマップ入社。販売員や売場責任者、バイヤー、マーチャンダイザーと、小売業における主要な職務を歴任。2000年に同社ECサイト「ソフマップ・ドットコム」のリニューアルに参画。その後、データマイニングやCRM、営業企画、経営管理に携わった。投資運用会社を経て2006年、ゴルフダイジェスト・オンライン入社。データマイニングチームの立上げや、DWH/BIの導入を行う。G10プロジェクトでは、会員基盤チームのPO、マネージメントフレームワークチームの推進役のほか、推進室のPM補佐を務めた。

 

─ ゴルフダイジェスト・オンラインは7月1日に無事、新システムをカットオーバーさせました。稼働直後にちょっとしたトラブルはありましたが、正直、こんなにうまくいくとは思っていませんでした(笑)。今日は、プロジェクトを牽引した4人に話を聞きます。まずは、おめでとうございます。

大日: ありがとうございます。ちょうど今日(8月25日)、全体会を開催してG10のクロージングを宣言する予定なんですよ(写真)。

─ 微修正を経て、通常運用に入るというわけですね。それにしても野心的な開発でした。

渡邉: はい。会員サービス基盤やゴルフ関連用品販売のEC、ゴルフ場予約、会計・ワークフロー、カスタマーサポートという5システムを再構築。このほか、インタフェース開発やマスターデータ整備といったサブプロジェクトが8つ。合わせて13プロジェクトを同時に走らせました。

─ 利用したIT製品もSAP ERPをはじめ、多岐にわたりますしね。さて、単刀直入にお聞きします。今回のプロジェクトをどう評価しますか。まずプロジェクトマネジャーを務めた渡邉さんから。

渡邉: 120%のプロジェクト運営ができたと思います。どのプロジェクトも遅れることなく進んだ点がプラス20%分です。正直、プロジェクトが13もあると、そのうち1つ2つは遅れるのは仕方ないだろうと思っていましたから。

─ 推進チームの志賀さんと中澤さんは?

志賀: マルチベンダー体制で1年半の短期開発でしたから、本当によくやったという感じです。やはり120%の出来だと思います。

中澤: セキュリティやシステム間の疎結合といった難度の高い要件を、暗号化技術やEAIツールなどの新たな技術を使ってクリアした。達成度は同じです。

─ 大日さんはどうですか。

大日: 当初の構想より、はるかに広い範囲をカバーしたという点で60%増。一方、やりたかったけれど時間的にできなかったこともある。この点で40%減。というわけで、私も120%(笑)。投資額は決して安くありませんが、妥当性のあるお金の使い方ができたと思います。

─ なんか口裏を合わせたような(笑)。プロジェクトの途中と違って、皆さん高評価ですね。

志賀: 出来上がったシステムそのものに対して、100%満足しているわけではないですよ、もちろん。どんなプロジェクトでもそうだと思いますが、まだまだ改善の余地はある。でもプロジェクトは高く評価していいと思います。

写真 GDOは8月25日、G10プロジェクトのクロージングを宣言した	提供:ゴルフダイジェスト・オンライン
写真 GDOは8月25日、G10プロジェクトのクロージングを宣言した 提供:ゴルフダイジェスト・オンライン

設計前のスケジュール見直しで開発失敗の危機を回避

─ 2010年5月にスケジュール見直しという事態が発生しましたが。

渡邉: はい。当初2010年12月だったリリース時期を、6カ月先延ばししました。

─ 2010年5月と言えば要件定義が終わったばかり。設計前の段階でリスケに踏み切った理由は?

渡邉: 各プロジェクトが上げてきた要件と開発スケジュールを精査した結果、元の計画では破綻する可能性が高いと判断しました。総合テストに充てられる期間が短すぎたんです。

大日: 設計前の段階でそうした危機を察知し回避できたことは、プロジェクトにとってプラスでした。

─ しかし経営陣にも社内にも、2010年12月の稼働を表明していた。それを守るため、例えば出来上がったシステムから段階的にリリースする、つまりいくつかのフェーズに分ける手もあったのでは?それをせずに、一斉リリースにこだわったのはなぜですか。

渡邉: フェーズ分けしても、リスクは変わらないと判断したからです。仮に全体を3つのフェーズに分けたとしましょう。第3フェーズのプロジェクトは、第1、第2フェーズが成功した環境を仮想的に用意してテストする必要があります。でも、もし第1、第2フェーズに大きな変更が発生したらどうなります?第3フェーズもゼロからやり直さなければならない。

─ それは分かりますが、開発推進側の都合ですよね。プロジェクトチームや現場から「変更する必要はない」といった声は出なかった?

大日: 実は、リスケを決めた時にいくつかのプロジェクトから反発を受けました。「うちは当初の計画通りに行きたい。カットオーバーを先送りして、余計なコストを負担するのはいやだ」というわけです。

─ どう説得したんです?

大日: 「自分たちだけでできると思うな」と一喝しました。

─ なるほど(笑)。

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