仕事には始まりと終わりがあり、ルールに基づいたプロセスや例外的な処理を経て進んでいく。組織の仕事には役割分担があって、組織構成に割りつけられた業務分掌規定などのルールに従ってプロセスが進む。いつも変化がなく整然と事が進めば何ら問題はない。だが社会や経済、市場の環境が常に変化しているため、仕事のプロセスを固定することはできない。環境に合わせて常に柔軟に変更していく必要がある。
実際にはそうはいかない。例えばプロセスの欠落を属人的に処理するシーンは多いが、それを変えようとすると抵抗を受ける。組織の構成は便宜上の仕分けだったにも拘わらず、組織が主張を始めてしまい、「組織の壁」による硬直化が始まる。プロセスはどんどん見えなくなり、隠れたところで陋習や弊習が蔓延していく。大きな組織になると病的現象は深刻になり、慢性疾患になる。いわゆる“大企業病”である。
評価や処遇などの人事が必ず絡んでいるために、大企業病を治す治療(=業務改革)は容易ではない。情報システムの善し悪しも絡むし、取引先の事情も絡む。プロセスは常に疲弊の危険に晒されている。
BPMで行政基盤を刷新する動きも
見えなくなった仕事のプロセスを可視化して改善する努力は古くから行われてきた。だがおよそ定着することはなかった。経営トップの鶴の一声で一旦プロセス改善が行われても、継続的な改善サイクルが回らず、いつの間にか元の黙阿弥になっていることも多い。
こういう問題は民間企業ばかりでなく、行政も全く同じである。経済産業省は平成23年度「業務最適化のための業務モデリングに関する調査研究」の報告書をまとめ、2012年6月に公表した。業務のモデリング手法としてBPM/BPMNを活用し、ビジネス(行政)基盤の構築を促そうとするものである。BPM(Business Process Management)とはビジネスプロセスに注目した業務のマネジメント手法であり、BPMN(Business Process Modeling Notation)はプロセスを記述・可視化する表記手法である。
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