筆者がこのコラムを書き始めて、5年めに入った。経営とITが融合しない現実や様々な場面で感じる違和感をもとに是正を勧告し、少しでも改善に向かうことを願ってこのコラムを書いている。ちょうど書き始めた頃、常勤監査役をやるようになった。その経験は、さらに経営の視点でこの問題を俯瞰するのに役立っていると思う。
経営とITの成否、つまり情報技術や情報システムの経営への取り込みの成功と失敗は、調査や統計分析をするまでもなく、経営トップの姿勢と理解によって決まる。これはITに限った話ではない。社員のモチベーションも企業風土も業績も、経営トップによって変わってしまう。経営哲学を持ってビジョンや事業のベクトルを示し、環境変化に対する舵切りをするのは経営トップの仕事だから当然である。特に攻めのIT活用には、経営トップの判断が必須だ。
経営者のビジョンや戦略性を受け止め、実現へ向けた活動をするのはシステム部門や情報子会社の役割である。だが9月に開かれた日本情報システムユーザー協会(JUAS)のイベント「JUASスクエア」のディスカッションに参加したとき、「情報子会社にはIT活用による親会社のビジネス革新への提案が求められている」という件(くだり)があり、強い違和感を覚えた。それこそ事業を牽引する経営トップの役割ではないのか?
ITの足を引っ張る経営者
いろいろな企業の経営とITを見てきた経験から言えば、残念ながらITの足を引っ張る経営層が少なくない。CIOのポジションにありながら、「私はITがわからない」「ITに関して私は素人だ」と言い切り、「CIOをやらされている」という発言をする経営者さえいる。システム部門や情報子会社のモチベーションが下がり、開発プロジェクトも失敗に終わるのが目に見えるようだ。
分からないとか、素人だと思うなら、学べばよい。決して情報技術の深淵を知る必要はない。コンピュータはどういう仕掛けで動くのか、その情報技術は何のために存在するのか、どんな変遷をしてどういう動向になっているのかを、経営的な目で学べば十分である。
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