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ERP導入企業は34.8%、経営改革や業績管理に活用する動きも─ERP研究推進フォーラム/IT Leaders共同調査

2013年2月7日(木)田口 佳孝(ERP研究推進フォーラム 常任理事)

企業における基幹業務システムの活用状況と満足度を調査するため、ERP研究推進フォーラムと本誌編集部は2012年5月、共同でアンケートを実施した。企業規模別に見たERPの導入率や、導入の目的、グローバル化に伴う海外拠点のシステム化状況などについて調査した。主要な調査結果を紹介する。

 

売上規模に比例してERP導入率と自社開発率が推移

まず回答企業437社に対し、ERPの導入状況を聞いた(図1)。「既に導入して活用している(目標とする適用範囲をほぼカバー)」と答えた企業は全体の11.7%だった。これに「既に導入して活用している(適用範囲を拡大中・拡大検討中)」(15.1%)と、「既に導入して活用しているが、他の製品やクラウド型を検討中」(6.2%)を含めると、導入済み企業は33.0%を占める。さらに「製品選定を終え、導入フェーズにある」(1.8%)を加えると、34.8%の企業がERPを前提にシステムを構築(もしくは構築中)していることになる。

図1 売上規模別のERP導入状況(n=437)
図1 売上規模別のERP導入状況(n=437)

図1から分かるもう1つのポイントは、売上規模が大きいほど導入率が高く、小さくなるにつれ下がることだ。売上が1兆円以上の企業では導入率(導入中を含む)は61.5%、50億円未満の企業では17.3%と大きな差異がある。

大企業においては、リスクや工数から手組みは現実的ではない。うまくERPを導入すれば連結子会社の業務データを一元管理したり、グループ会社全体で業務プロセスを統一したりといった効果も見込める。しかし小規模な企業の場合、ライセンス費やサポート費が重荷になるし、会計など一部を除けば業務の固有性も高い場合が多い。ERP導入が、必ずしも自社の便益に直結するわけではないと受け止められているようだ。

結果、売上が50億円未満となる企業は「自社開発で対処しており、(ERPを)導入する予定はない」と答えた企業が43.9%を占める。1兆円以上の企業はわずか15.4%に留まる。

経営管理にERPを活用
クラウド化にも期待

業務内容別に、どのようなシステムを利用しているのかを聞いた結果が図2である。主な業務として「会計」「販売」「購買」「経営管理」「人事」「生産」「物流」「顧客管理」の選択肢を用意し、それぞれのシステムの実装方法を調べた。

図2 基幹業務のシステム化状況
図2 基幹業務のシステム化状況

ERPを利用する業務は「会計」が37.3%と高く、業務パッケージや自社開発などを含めると、91.0%の企業がシステム化していることとなる。

「経営管理」は「システム化していない」が25.9%と高いものの、「ERPを利用」と答えた割合は徐々に増加傾向にある。2010年実施の調査では6%、2011年は15%で、今回は18.3%だった。ERPが蓄積する財務データを分析し、経営資源の効率化や戦略の立案に役立てようとする企業が増加していることを示している。

クラウドの利用状況にも注目したい。近年、業務システムをクラウド化するケースが目立つが、基幹業務においては「クラウド(SaaS/ASP)を利用」はすべて1割を下回る。「顧客管理」が8.7%でもっとも高く、「物流」は1.6%、「生産」は0%だった。

「顧客管理」や「人事」システムの場合、自社独自の仕様や機能を実装するといった必要性はそう多くない。そのため、カスタマイズの制約があるものの低コストで利用できるクラウドを検討するケースが増えている。しかし「生産」や「物流」のような独自プロセスや機能が自社の価値につながると考えられる領域においては、カスタマイズしにくいクラウドはあまり馴染まない。システムのクラウド化を検討するには、固有のプロセスや機能を含む業務なのかを検証しておくことが必要だろう。

とはいえ、クラウド化するシステムといえば、これまではメールやグループウェアなどが大半だったが、ここに来て基幹システムに適用するケースが散見され始めた。今後の動向に注意したい。

ERP本来の目的に帰着
IFRSも根強く対応進める

企業はどんな目的でERPを導入しているのか(図3)。結果は「自社内の業務標準化・効率化」が72.0%で、「現行システム老朽化による全面刷新」(46.5%)が続く。

図3 ERP導入の目的
図3 ERP導入の目的

特に「経営管理指標の精度向上」(39.1%)と「業務管理指標の標準化」(32.1%)に注目したい。過去の調査では、ERPを経営管理に役立てる目的で導入するケースは必ずしも多くなかった。しかし図2の「経営管理」のERP適用率が高まっていることからも分かるように、ERP本来の用途をきちんと理解し、導入効果を高めようとする企業が増えつつあるようだ。

国内では先送りとなった「IFRS(国際会計基準)」への対応も29.2%と少なくない。国内での適用を見送ったとしても海外展開する企業の場合、海外拠点で適用を義務付けられるケースがある。国内の動向を問わず、率先してIFRSを適用する企業が根強くいることが調査から明らかになった。

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