[調査・レポート]

会津若松市は”スマートシティ”の先頭ランナーになるか?

2013年10月2日(水)田口 潤(IT Leaders編集部)

ここ数年、よく聞く言葉の1つになったスマートシティ。しかし具体像が見えにくいのも事実だ。その中で注目されるのが、会津若松市の取り組み。蘭アムステルダム市と提携するなど、スマート化への道をひた走っている。

会津大学の存在がスマートシティ構想に不可欠

 もちろんアクセンチュアのサポートだけではない。アクセンチュア福島イノベーションセンターを率いる中村彰二朗センター長によると、スマートシティを目指す取り組みを行う上で、会津若松市のポテンシャルが高いという。「2年前に拠点を会津若松に置くことを決めたのは、3.11の震災や原発事故の被害が被災地の中で相対的に小さかったこと、市の人口が12万5000人と大きすぎも小さすぎもしないこと、ICTを専門とする会津大学が立地すること、などがあります。加えてバイオマス発電を手がけるグリーン発電会津という企業があり、再生可能エネルギーへのシフトも可能です。会津若松市は、スマートシティに取り組む上で、好条件を兼ね備えていたのです」。

 特に会津大学の存在は大きいという。同大の理事であり復興支援センター長を務める岩瀬次郎氏は、「ICTに特化した大学として会津大は、研究者100名、1学年の学生数は240人と日本最大規模です。例えば東京大学でも、コンピュータサイエンスに限れば、1学年100人規模ですからね。大学発のベンチャ企業も25社あり、総売上げは合計20億円を超えます。これもトップでしょう。さらに教員に占める外国人の比率は4割。学部の授業の半分は英語ですし、大学院では100%英語です」と説明する。スマートシティ推進に欠かせないICT人材を供給できるのである。

 すでに会津大学とアクセンチュアが協力し、経産省の「産学連携イノベーション促進事業」などの資金支援を獲得。スマートグリッド基盤、エネルギーマネジメント、M2M、情報セキュリティなどを研究している。同時に情報セキュリティ人材や、データ分析に秀でたアナリテック人材の育成に的を絞った教育も実施中だ。そこにNECや富士通、NTT東日本、KDDI、ネットワン・システムズ、シマンティックといった大手IT企業が協力するスキームもすでにあるという。中核大学の存在なしにはできなかったことである。

図1:会津大学主導の産学連携スキーム

 それにしてもなぜ、アクセンチュアはここまでスマートシティ、そして会津若松市に肩入れしているのか。アクセンチュアとしての事業モデルは何か。中村センター長は、こう説明する。「3.11は、日本が抱える多くの課題をあぶり出しました。象徴的だったのが首都圏を中心にした一極集中モデルによる社会インフラの危機管理上の脆弱性です。エネルギーも雇用も交通や通信などの社会インフラも、多くが一極集中です。これからの時代はそこから脱却し、自律・分散・協調のモデルへの転換が求められます。社会インフラをグリッド化するとか、地域の自然資源を活用した再生可能エネルギーへのシフト、高付加価値産業の誘致による雇用の確保といったことです。これは会津だけの問題ではありません。成長を達成した後の転換期にやってくる、ほとんどの地方都市や世界各国が抱えている問題です。しかし具体的に、どうすれば問題を解決できるのか?答は単純ではなく、我々のような、企業の活動する余地が膨大にあります。ですからアクセンチュアは各国でスマートシティを支援しています」。

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