富士通は2025年3月6日、京都大学と弘前大学による「弘前健診因果ネットワーク」を、AIサービス「Fujitsu Kozuchi」の因果意思決定支援技術と組み合わせ、限られた少量データから健康医療領域の因果関係を高精度に導出することを可能にしたと発表した。同日から、同技術のトライアル環境を、健康関連の法人向けに提供開始する。富士通は、同技術によって人々のウェルビーイングの向上に貢献し、企業の健康経営を支援する価値を提供していく方針を表明している。
富士通は、京都大学(本部:京都府京都市)と弘前大学(本部:青森県弘前市)による「弘前健診因果ネットワーク」を、AIサービス「Fujitsu Kozuchi」の因果意思決定支援の技術と組み合わせ、限られた少量データからヘルスケア・医療領域の因果関係を高精度に導出する技術を開発した。2025年3月6日から、この技術を試すことができるトライアル環境を健康関連の法人向けに提供開始する。
弘前健診因果ネットワークは、「弘前大学COI-NEXT」(注1)が「岩木健康増進プロジェクト」(注2)で得た、多項目にわたる健診結果のビッグデータに対し、京都大学と弘前大学の研究グループが適用したベイジアンネットワーク技術により、項目間の因果関係をネットワークとして推定するもの。同ネットワークに、富士通が開発した因果意思決定支援技術の1つ「因果知識転用技術」を適用する。
注1:COI-NEXTは、文部科学省・国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)の「共創の場形成支援プログラム(COI-NEXT)」のこと。弘前大学はその1拠点として採択され、研究活動を行っている。
注2:岩木健康増進プロジェクトは、弘前大学、弘前市、青森県総合健診センターが「短命県の返上」を目的に2005年度から弘前市岩木地区において実施している大規模住民合同健診のこと。
因果知識転用技術は、既存のデータから得られた因果関係の知識を因果ナレッジグラフ(注3、図1)に変換し、転用可能な因果構造をデータ分布に従い細粒度で特定。これにより、項目や抽象度が異なる場合でも知識の転用が可能になる。データが不足している場合でも、信頼性の高い因果関係の導出が可能になるという。
注3:因果ナレッジグラフ(Causal Knowledge Graph)は、データ間の関係を視覚化して情報の検索や推論を支援するナレッジグラフと、データに内在する因果関係を推定する因果分析を融合させた富士通の技術。データに含まれる因果関係とそれに関連した知識が統合されて格納される。これを用いることでデータに基づいた効率的な意思決定が可能となる。

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今後、富士通は得られた知見を生かして、同技術の精度向上と機能拡充を進め、ヘルスケア・医療分野におけるAI技術の発展と企業の健康経営に貢献するとしている。また、因果意思決定支援の技術を、財務および非財務情報にも適用し、幅広い企業の意思決定支援に貢献する方向で開発を進める計画である。
富士通は、同技術によって人々のウェルビーイングの向上に貢献し、企業の健康経営を支援する価値を提供していく方針を表明している。同社研究員が大学内に常駐または長期滞在しながら産学連携の活動を行う「富士通スモールリサーチラボ」の推進や、京都大学と共同で「大規模医学AI講座(富士通リサーチラボ)」の設立など、健康/医療分野の課題解決に向けたAI技術の研究開発に取り組んでいる。