IDC Japanは2014年1月8日、OSSの利用実態調査の結果を公開した。「本番環境で導入している」との回答は約3割。そのほか注目点のいくつかをピックアップする。
「これまでOSS(オープンソースソフトウェア)は商用ソフトウェアに対するコスト削減手段としての役割が大きかった。これからは第3のプラットフォーム(クラウド、モビリティ、ビッグデータ、ソーシャル技術の4要素で構成)での活用など、新たにビジネスやサービスを生み出すための役割が大きくなっていくと考えられる」──。IDC Japanソフトウェア&セキュリティ シニアマーケットアナリストのこのコメントが、OSSを巡る今後の状況を象徴しているといっていいだろう。
IDC Japanは2014年1月8日、OSSの利用実態調査の結果を公開した。調査は1138社から有効回答を得た1次調査と、ここで「何らかのOSSを導入済み」と回答した企業を対象にした2次調査から成る。このうち1次調査でOSSを「本番環境で導入している」と回答した企業は32.0%。1年前の2012年12月の調査では25.3%だったので、6.7ポイント増加した。業種別で見たとき、導入率が高いのは公共/公益(44.8%)、情報(38.7%)、運輸/サービス(35.8%)といったところ。企業規模では「従業員1000人以上の企業において、本番環境での導入が40%を超えた」(同社)としている。
2次調査ではOSS投資予算と売上高の相関を調べた。「OSSに関する予算を増加している企業の64.8%は売上高が増加している。そのうち26.1%は売上高が10%以上増加している」、「IT戦略の中においてOSSを積極的に活用していく方針を採っている企業の44.4%は売上高が増加しており、その約半数の企業は売上高が10%以上増加している」といったことだ。こうした結果から、IDC Japanは「OSSの活用に対して積極的な企業は、ビジネスが成長している企業が多い」と分析するが、これは因果関係が逆だろう。売上高が10%以上増加するのは新興企業が多く、OSS活用に関して抵抗が少ないと見る方が自然だ。
MySQL、PostgreSQLなどOSSのRDBMS(リレーショナルデータベース管理システム)についても調べている。一般企業ではMySQLの無償版(コミュニティ版)の利用率が34.8%と最も高く、従業員1000人以上の企業に限ればMySQLの商用ライセンス版の利用率が39.8%になった。一方、コンテンツサイトやポータルサイト、SNSなどを提供するサービスプロバイダーでは、PostgreSQLが41.5%と最も高い利用率だった。その理由や背景に関しては言及されていない。
ビッグデータ処理ソフトとして関心の高い「Hadoop」はどうか。一般企業で利用中なのは1.5%に留まった。用途はバッチ処理、システムログの管理/解析、ストレージ/データ保存など。これに対しサービスプロバイダーでは12.5%が利用中で、検索/インデックス作成、Webログの管理/解析などに使っている。しかしサービスプロバイダーにしても1割強しか使っていないわけで、Hadoopをどう活かすかはまだこれから、と言っていいだろう。なお、調査時期は2013年11月。対象は国内の企業および組織で、1次調査で1138社、2次調査では515社から有効回答を得ている。