[シリコンバレー最前線]

金融業界に忍び寄るデジタルマネー Bitcoinの高騰に各国中央銀行も戸惑い

2014年1月14日(火)山谷 正己(米Just Skill 社長)

デジタルマネーの代表例である「Bitcoin(ビットコイン)」の流通量が世界で1200万個に達している。2013年12月末現在の取引レートは約7万5000円で、時価総額は9000億ドルに相当する。その勢いから金融業界における破壊的テクノロジになると目されている。

 世界的に通貨が不安定ななか、デジタルマネー(仮想通貨)が、にわかに人気を集めている。2009年に生まれた「Bitcoin」を皮切りに、「Alphacoin」や「Fastcoin」「Litecoin」など多数のデジタルマネーが試行されている(図1)。

Amazon 、Appleなども検討中?

図1:各種の電子コインのロゴ
図1:各種の電子コインのロゴ

 つい最近、金融大手の米JPMorgan Chaseが、Bitcoinと同様のデジタルマネーの特許を申請した。インターネット通販大手のAmazon.comほか、Apple Computer、eBay、Googleなどに対しても「デジタルマネーのような何かを企んでいるのでは」という噂が流れている。

 デジタルマネーは、その実現に暗号化技術を使うことから暗号通貨(cryptocurrency)とも呼ばれる。暗号通貨の具体的な媒体が電子コインである。例えば、Bitcoinは、電子コインに暗号化と電子署名を適用し、P2P(Peer-to-Peer)通信によって、電子コインの所有権を転送する通貨システムである。取引所でリアルな現金と交換して使用する。

 Bitcoinを例に取れば、「Bitcoin exchange(取引所)」あるいは、そのWebサイトで購入する(図2)。取引所としては、「Bitstamp(www.bitstamp.net)」「Mt. Gox(www.mtgox.com)」「Coinbase(coinbase.com)」など多数開設されている。

図2:Bitcoinの利用形態

 交換したBitcoinは自身のデジタル財布に保存し、Bitcoinを受け付ける販売店などで商品/サービスの購入に使う。Bitcoin取扱店のディレクトリである「Bitpay.com」には、1万2000社が登録されている。

その品目は、宅配ピザやコーヒーショップから歯医者まで多岐に渡る。シリコンバレーで人気の電気自動車(EV)である「TeslaモデルS」の購入代金(約7万ドル)をBitocoinで受け付ける自動車ディーラーも現れた。

クレジットカードをも不要に

 ネットショッピングなどで現金に変わる手段としては、まだまだクレジットカードが主流だろう。誰もが保有し、国内外を問わず、どこでも使えるようになっているため、生活に欠かせないツールの1つである。

 クレジットカードが誕生したのは、1950年のことだ。同年のある日、ニューヨークの実業家フランク・マクナマラ氏は、レストランで夕食を採っていた。食事を済ませ、いざ代金を支払おうというときになって財布を忘れたことに気づく。これがきっかけになり、レストランの食事代をツケで支払えるような仕組みを思い付く。そして、富裕層の人々を集めて「ダイナーズクラブ(Diners Club)」を結成し、クラブカードを発行した。これが「Diners Card」すなわち“diners(食事をする人)のカード”である。

 Diners Cardを持っていれば、加盟レストランでは食事代を記録するだけで、後からレストランがダイナーズクラブに一括請求する。ダイナーズクラブは会員単位に請求書を発行し、会員は全額を一括払いする。当時はクレジット(延払い)の機能はなかったわけだが、これがクレジットカードの始まりとされている。その後、1958年にBank of Americaの「BankAmericard」(後のVISAカード)と「American Expressカード」が、1966年には「MasterCard」が生まれた。

 日本では、1961年に「JCBカード」が生まれているが、直ぐには普及には至らなかった。1975年頃からAmerican Expressが流したTVコマーシャルで、ゴルフの有名選手であるジャック・ニクラウス氏がカタコトの日本語で「デカケルトキワ、ワスレズニ(Don't leave home without it)」という宣伝文句を語りかけたことで、日本でもクレジットカードが認知されるようになったものである。

 しかし、ネットショッピングが生活に浸透してくると、お金と買い物に関する感覚も随分と変わってきた。

 日本の1000円札は、野口英世の肖像を印刷した紙である。この紙自体が1000円の価値を持っているわけではない。発行元の日本銀行が1000円の価値を保証しているわけだ。

 そこで、日本銀行に代わる組織が価値を保証することで、インターネット上で世界共通の通貨を作ったらどうなるだろうか。これは至って自然な考えだ。実現できれば、クレジットカード会社の世話にもならず、貨幣流通の手数料を不要になる。しかもデジタルだから、リアルタイムに貨幣を流通させることができる。こうして誕生したのがデジタルマネーである。

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