[加藤恭子のマーケティング志向で行こう!]

マーケティングの世界にも“アンバサダー”を─熱心なファンの存在がブランド価値

2014年1月30日(木)加藤 恭子(ビーコミ 代表取締役)

キャロライン・ケネディ駐日米大使の就任が大変話題になりましたね。そんな折、(キャロラインさんのような本物の大使とは違いますが)「大使をマーケティングに生かそう」という動きが注目されています。いわゆる「アンバサダーマーケティング」です。

長期的に見ても戦略的な施策

 アンバサダー(Ambassador)は「大使」のこと。アンバサダーマーケティングの説明でよく例に挙がるのが「ネスカフェアンバサダー」です。ネスレでは、インスタントコーヒーをおいしく入れるためのマシンを無料で貸し出す際に、その旗振り役となるアンバサダーをFacebookや同社のWebサイトで募集しています。具体的には、アンバサダーになった人が勤務する会社のオフィスにそのマシンを設置してもらいます。その後は、マシンで入れるコーヒーの味を気に入ってファンになる社員が増えて、マシンの専用カートリッジも売れるという仕掛けですね。

 休憩や商談など、ビジネスパーソンにとってコーヒーは必需品と言ってよいでしょう。スターバックスのようなカフェチェーンも増えましたし、最近ではコンビニの店頭にあるマシンでドリップするコーヒーが安くておいしいと話題になっています。ネスレにとって周りは強力なライバルだらけなのですが、アンバサダーの活躍次第では、それらのライバルからからシェアを奪い、またオフィスで定番のレンタルのコーヒーベンダーにとって代わる可能性も出てくるかもしれません。長期的に見ても、なかなかに戦略的なマーケティング施策なのではないでしょうか。

 あるウォーターサーバーのメーカーは、2等しか出ない抽選(1等だと嘘っぽいので)の結果を通知し、「貴社は2等でしたので無料で設置します」と言って自社の機器を設置してもらおうとして問題になりました。オフィスなどにそうした機器を最初に設置してもらうのは大変なことです。それを正当な方法で、企業内の人の協力を得る方法がこのアンバサダーなのです。

アンバサダーになるメリット─アンバサダー制度を取り入れたIT企業も

 アンバサダーの選定には所定の審査があり、誰でもなれるわけではありません。たいていの場合、応募時に意気込みを書いたり、電話での面談でアピールをしたりします。それでも、アンバサダーになれれば、いくつかの恩恵か受けられます。直接的な金銭の授受はありませんが、対象の商品はまずもらえるでしょう。ですが何よりも、「アンバサダー=商品のファン代表」に選ばれたという事実が非常に大きいと思うのです。言い換えれば、アンバサダーは熱烈なファンでなければ務まらないし、企業もそうした適任者を選ばないとうまく回らないのです。

 もしかしたら、ブロガーやオピニオンリーダーのようなものと思われる方がいるかもしれませんね。それも正解で、アンバサダーは、ブロガーやオピニオンリーダーが兼ねていることもあります。周りに影響を与えることのできる彼らがアンバサダーになってくれれば、企業の側としても大きなメリットがあるからです。

 IT業界でアンバサダー制度を実施している会社もあります。デジタルノートのクラウドサービスを展開するエバーノートがそうです。同社のWebサイトには、アンバサダーに選ばれた8人が写真入りで紹介されています。このサイトに載っている文章がとてもわかりやすいので、ここで引用します。─「Evernoteアンバサダープログラムは、仕事や日常生活でEvernoteを活用し、効率性・生産性を向上させたり、生活をより豊かにするためのヒントや活用法を共有していくEvernote社公式プログラムです。Evernoteアンバサダー(英語で「大使」という意味)は、様々な分野でEvernoteを活用しているユーザが就任し、オンライン上での情報発信やオフラインでのイベント開催等の活動を通してEvernote の魅力や活用法をお伝えしていきます」─。

 さて、企業は、アンバサダーに向く人をどのように選べせばよいのでしょう。最も重要な観点は、その制度以前から熱烈なファンであるかどうかではないでしょうか。自社商品ブランド価値向上に効果のあるアンバサダーですが、そうした人に応募してもらうには、やっぱり、以前からある程度のブランドの魅力がないとうまくいかないでしょう。成功している企業の例を見ても、それは強く感じます。


●筆者プロフィール

加藤恭子(かとう きょうこ)
ビーコミ 代表取締役
日本マーケティング学会理事、サイバー大学客員講師
横浜市立大学卒。青山学院大学 大学院 国際政治経済学研究科 修士課程修了。IT系月刊誌やオンラインメディアでの記者・編集者を経て、BtoBのIT企業でPR/マーケティングマネージャーを歴任。CRM企業の日本法人立ち上げにも参画。2006年6月、外資系ERPベンダーでのマーケティングマネジャーの職を辞し、個人事業としてビーコミュニケーションをスタート。2007年8月より株式会社ビーコミとして法人化、代表取締役として活動開始。複数企業のPR/マーケティング支援を行うほか、各種媒体で執筆活動や企業・団体向けに講演活動もしている。特にテクノロジー系企業の広報・マーケティングのコンサルティングやソーシャルメディアを活用したコミュニケーション活動を支援している。

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