リクルートグループ各社の事業展開をITで支援するリクルートテクノロジーズ。事業基盤がネット中心になる中、ITに求められる要件は多様化・高度化している。スマートフォン用アプリケーションの開発リーダーを務める上島賢士氏は、「小さなアプリケーションであっても品質にはシビアであれ」と強調する。
ITマネジメント統括部ITマネジメント1部
スマートデバイスグループ 上島 賢士 氏
旅行やグルメ、住宅や車、人材などなど、リクルートグループが営むマッチング事業の対象は多種多様だ。これらのモノやサービスについて、提供者と利用者を結び付ける。かつては分厚い情報誌がマッチングの“場”だった。だが、それも今はネットへの移行が加速している。情報誌がなくなったわけではないが、リクルートグループは自らを「ネットサービス企業」と呼んでいる。
なかでもスマートフォン用アプリケーションの重要性は高まる一方だ。2014年3月時点で、リクルートグループが提供するスマホ用アプリの数は、約300種類に上る。これらのうち、事業との関連が高いスマホ用アプリの開発を担うのが、リクルートグループのIT機能会社であるリクルートテクノロジーズが持つスマートデバイスグループである。グループ横断でスマートデバイス領域の競争力を強化するために、2012年10月に設置された。
同グループの開発リーダーの1人である上島 賢士 氏は、スマホ用アプリについて、「各事業会社の主要なサービスになってきています。スマホという小さなデバイス上で動作しているため、一般には作るのも簡単なソフトだと思われているかもしれませんが、求められている機能や品質は、決して低くはありません」と話す。上島氏のグループでは常に10種類程度のスマホ用アプリを並行して開発している。
品質向上のためにスマートデバイスグループでは、リクルートグループ内での知見やアプリケーション開発用のTipsなどを集めるほか、開発標準を整備したり、ビルドやテストといった工程の自動化を図ったりもしている。上島氏は、「競争優位性を確保しながら事業のためのアプリを開発するためには、開発者個人のスキルだけに頼るわけにはいかないのです」と、品質確保に向けた取り組みの重要性を語る。
品質面で対応が難しい課題の1つにセキュリティがある。特にAndroid用アプリでは、脆弱性が入る余地がある。FacebookやDropBoxといった業界を代表する大手サービス事業者が開発するアプリでも完全に払拭できていないのが現状だ。
アプリの事業における重要性が高まれば高まるほど、脆弱性に絡むリスクも大きくなっていく。そこでスマートデバイスグループが本格導入を踏まえて検証を進めているのが、Androidアプリの脆弱性診断サービス「Tao Risk Finder」(タオソフトウェア製)である。アプリに含まれる脆弱性や、マルウェアだと誤解される項目などが検出される。「設計にまで踏み込んだチェックができるなど、開発者に有効なフィードバックが返せると考えています」と、上島氏は期待する。
その上島氏はスマートデバイスグループの今後について、「開発のプロとして、QCD(Quality、Cost、Delivery:品質、コスト、納期)には当たり前にこなせるようでなければなりません。そのうえで、スマホ用アプリでどんな事業成果を上げるのか、そのためにどうするのかを、事業会社の企画担当者と共に考えられるようにしたいです」と力を込める。