[市場動向]

アジア7カ国が情報処理技術者試験に基づく統一試験を実施、ユーザー企業にも影響大

2014年6月10日(火)田口 潤(IT Leaders編集部)

日本の情報処理技術者試験を元にした「アジア共通統一試験」。従来の6カ国にバングラデシュが加わり、着実に広がりを見せている。日本にとって大きな意味を持つ施策だが、課題も少なくない。

図1 アジアに広がる日本の情報処理技術者試験
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 一見、多くのユーザー企業には縁遠い話に思える。だがグローバル展開、特にアジアで事業を行う企業なら知っておいて損はない。というか、知った上でうまく活用してほしい──。何の話かというと、情報処理技術者試験のアジア展開のことだ。日本の試験を元にしたアジア共通統一試験が、ASEANを中心に親日的な6カ国──フィリピン、タイ、ベトナム、ミャンマー、マレーシア、モンゴル──で実施されており、この5月末には、新たにバングラデシュが10月から実施することが明らかになった(図1)。日本ローカルだった試験がアジアに広がっているのだ。

 そのメリットは大きい。一例を挙げると、システム開発のオフショア先選定はもちろん、アジア各国におけるシステム開発人材や企業の調達は、それを必要とする企業にとっては悩みの種。仕事をやらせてみないと分からないのが実情だ。しかし情報処理技術者試験の合否が分かれば、必要条件の1つをクリアしている判断の目安になる。合格していれば優秀とは限らないが、一定水準の知識があることは間違いないし、合格に向けて努力した事実も判別できるからだ。

 言葉の問題が緩和されるのもメリットの1つ。アジア共通統一試験は当然、英語で行われる。日本側がアドバイスをしながら日本の情報処理技術者試験の問題を基本に、参加各国の担当者が集まって英語の問題にする。このため日本の試験に出てくる用語とアジア共通統一試験の用語は、対訳関係が明確になる。日本語と英語という根本の問題は残るにせよ、言葉の意味が共通なら齟齬は生じにくくなる。

 感覚的な話ではあるが、IT人材の育成や評価といった点で日本発の基準が広がることは、アジア諸国との関係強化という点で日本にとって重要だと考えることもできるだろう。例えば、日本のIT人材や企業がアジアで仕事をする、あるいはアジアの仕事を獲得する場合。共通の試験制度が広がっていれば、仕事を獲得しやすくなる可能性もある。工業規格や通信規格ほどではないにせよ、自国のやり方を他の国に展開する利点といっていい。

 一方、単独では困難な試験を実施することで、各国は技術者の底上げや情報サービス業の振興を図れる。それだけではない。試験の合格者には、日本での就労に必要な在留資格の特例が適用される。具体的には、在留資格に関する基準のうち、(1)「業務に必要な技術もしくは知識に係る科目を専攻して大学を卒業もしくはこれと同等の教育」、または(2)「10年以上の実務経験」という、上陸のための基準をクリアしたと見なされ、技術の専門家として日本で就労できるのだ。

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