米国最大の携帯通信事業者のベライゾン・ワイヤレスを傘下に擁し、ネットワーク、クラウド、セキュリティなど幅広い事業を営む米ベライゾン。グローバルカンパニーのトップは、目まぐるしいICTの進化をどう捉え、ビジネスに活かそうとしているのか。来日したCEO、ローウェル・マクアダム(Lowell McAdam)氏に話を聞いた。
積極的な買収なども含め、様々な領域に事業を広げている。CEOとして、社内のITプラットフォームにどのような考えを持っているか。
2013年にベライゾン・ワイヤレスを完全子会社にした経緯があるが、それと前後して同時に17社を統合する取り組みを進めた。狙いの1つには各種サービスを提供するITプラットフォームも標準化・シンプル化して、競合他社よりも優れたコスト構造を実現しようということがある。
エンタープライズサービスを提供する部隊というくくりで言うと、ここ4年ほどかけて300くらいのシステムを順次、新しいプラットフォームに移行しているところだ。口で言うのは簡単だが、実際には一筋縄ではいかない難プロジェクト。もっとも、競争優位を生み出す根源でもあるので、全力を尽くしている。だから私のチームの中でもCIOは最も重要なポストの1つである。
なんと言っても、ビジネススピードを上げられることのメリットは大きい。新しいサービスの仕様を詳細に詰めた後、提供開始に向けてプラットフォームをプロビジョニングするのに、これまでは数週間がかかり、かなりの人手を要した。それが今、作業負荷をかけずに数時間単位で対処できるようになっている。
自身がCIOを経験していないのに、実務上の作業負荷などシステムに関わることを随分と詳しく知っている。
CEOであれば、誰でも自社の競争優位のポイントに理解を深めようとするのが当然であり使命でもある。当社は顧客に対して、ネットワークやセキュリティなどに関わるサービスを提供しており、それを支えるテクノロジーや自社の取り組みは常に把握しておかなければならないと考えている。
私は例えばセキュリティの専門家ではないが、顧客にとっては非常に重要なこと。だからこそ、時間をかけてでも理解して、必要とあらば積極的に投資して顧客が求める機能に磨きをかけていかなければならない。それが企業トップの責任だ。
私がこうして胸を張って言えるのも、非常に優れたCIO、ロジャー・グルナーニ(Roger Gurnani)と仕事ができていることの証だ。毎日のように彼から、様々なインプットがり、私は非常に啓蒙されている。CEOとCIOが密にコミュニケーションを取ることは、とても大事なことだ。
BYODにも積極的に取り組む
BYOD(私物端末の業務利用)が本格化しないのが1つの例だが、日本企業の大半はセキュリティリスクを勘案して、あえて冒険はしないという傾向が強い。貴社の場合、CEOとして、どのように考えているか。
BYODは世界的なトレンド。従業員がテキパキと仕事をこなしたいというニーズを満たすにはフレキシビリティが必要であり、当社も積極的に取り組んでいる。
詳しくはCIOのマターとなるが、認証ユニバーサルIDサービス「Universal Identity Services」、デバイス管理の「mobile workforce manager」といった自社製品を活用して、万全なセキュリティ体制の下で運用しているのが実情だ。
デバイスレベルでセキュリティを考えることももちろん大切だが、これからはアプリケーションレベルのセキュリティの重要性が高まるだろう。IoT(Internet of Things:モノのインターネット)の台頭で、ヘルスケアやエネルギー、自動車などの分野で様々なモノがネットワークにつながるようになり、この動きに歯止めをかけるわけにはいかない。何かあれば、いつでも素早く接続をシャットダウンするなど、セキュリティの面で世の動きの1歩先をいくテクノロジーが求められている。。
自社で様々なチャレンジを続ける一方で、顧客に向けてネットワークを基軸に万全なサービスを提供していく。グローバル企業は今、地域ごとのネットワークの特性だとか文化などに照らしながら、さまざまな取り組みを進めている。先のBYODなどもそうだが、顧客のニーズは何なのかをしっかりと理解し、それにミートしていくのが当社の大事な戦略である。
会員登録(無料)が必要です