[金谷敏尊の「ITアナリストの仕事術」]

仕事術No.14「点と点をつなぐ」

2014年7月25日(金)金谷 敏尊(アイ・ティ・アール 取締役/プリンシパルアナリスト)

ギターを趣味としていた筆者はかつて、作曲をしたりライブをしたりしていた。その時の経験が、実は現在のアナリストとしての仕事にもつながっていると感じる時がある。今回は、そんな話をテーマに据えてみる。

 「点と点をつなぐ(connecting the dots)」は、スタンフォード大学の卒業式スピーチで披露されたスティーブ・ジョブズの有名なエピソードのひとつだ。人生は山あり谷あり、計画通りにまっすぐに事を進めるのは容易でない。しかし、一見、無駄に思える経験でも、ひとたび真剣に学習したことは、時を経て異なる場面で生きてくることがある。

 Appleが開発したMacはデザイン性に優れ、多くのユーザーを魅了し続けている。とりわけフォントの美しさには定評がある。多彩なフォントは、1984年にリリースされた初代Macintoshから備わっており、後にWindowsにも模倣されることとなった。だが、フォントを重視するMac OSの設計思想は、ジョブズが計画的に盛り込んだ仕様ではなかった。

 設計開始後、過去に学んだ芸術的なアルファベットの書体やデザインの知識が突然蘇えってきて、その結果実装することになったのである。その知識は、ジョブズがリード大学をドロップアウトする直前、食事もままならない時代に、興味本位で潜り込んだカリグラフィーの授業で得たもので、コンピュータとは無縁のものだった。10年後にそれがビジネスに生かされることになろうとは、当時知る由もなかったという。

作曲活動と執筆活動

 過去の忘れかけていた学びや体験が、現在の仕事に生かされる。そんな「点と点がつながる」ような体験が筆者にもある。例えば、アナリスト・レポートを書く時がそうだ。駆け出しの頃、仕事を任されて半年ほどたって定期的に論文を書くようになった時、ふと既視感というか、過去に同じ作業をしていたような妙な気分に襲われた。創作するプロセスにおいてである。

 論文を執筆する時、たいていの場合は、何か言いたいことがあってそれを肉付けしたり、筋立てを考えながら、徐々に形にしていく。この「何か言いたいこと」とは、普段思っていたり、突然湧いてきたり、ないしは誰かの発言にピンとくるなど、要するにインスピレーションで得られる。それをコアメッセージとして明確化して、作品として成り立つようにストーリーを付けて、アレンジを加える。

 このプロセスが何かに似ていると思った。熟考した結果、それは過去に手掛けていた作曲のプロセスとほぼ同じであることに気付いた。私はアマチュアのギタリストであり、中学から大学にかけて趣味でよく曲を作っていた。たいていの場合、まず、サビ(一番盛り上がる部分)のメロディや歌詞を思いつく。これを形にして、イントロや他のフレーズをつくる。最後に、間奏やソロを入れてアレンジして完成させるという訳だ。ギターリフだけを思いつく事もある。いずれにせよ、文章を書くのと同じでインスピレーションありき。完成させるまでの手順もほぼ同じだった。

●Next:人生に無駄などないことに後で気づく

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