国産ERP大手のワークスアプリケーションズが、今までの発想とは一線を画する次世代ERP製品を開発している。クラウドネイティブな技術を全面採用しているのが特徴で、ビジネスアプリケーションのあり方を根本的に変革する可能性を秘めている。
RDB(リレーショナルDB)に代えてKVS(キーバリューストア)を採用、Googleサービスに見られるサジェスト機能を標準装備、そのほかオープンソース・ソフトウェアなどクラウドネイティブな技術を利用──。国産ERP大手のワークスアプリケーションズが、従来のERPとは根本的に異なる特徴を持った、次世代ERP製品を開発していることを明らかにした。一言でいえば、消費者向けサービスを支えるバックボーン技術を用いて、企業アプリケーションを変革するものだ。
同社が展開するERP製品「COMPANY」シリーズのデータベースは、SAPやOracle製品と同じくRDBを採用している。というか、企業システムそのものが、RDBを根幹にしている。テーブル形式のデータの見やすさや管理の容易さ、RDBを扱えるエンジニアの豊富さなど、単にデータベースといえば、RDBを指すほどだ。技術的にも、トランザクション処理に必要な、いわゆるACID(原子性、一貫性、独立性、永続性)特性を満たすにはRDBが最適とされる。
そんな中で同社が中核DBとしてKVSを採用するのは、Googleのような使い勝手を可能にするため。同社CEOの牧野正幸氏は、こう説明する。「数年前、消費者向けのサービスやアプリに感動している自分がいました。Googleのサジェスト機能は、その一つです。しかし企業向けアプリケーションを開発・提供する企業の経営者が、それに感動しているようではダメだと気づきました。なぜ当社のERPはそうではないのか。なぜ企業のアプリケーションは使いにくいのか。そこが出発点です」。
ここでサジェスト機能とは、検索語を入力する際、最初の何文字かをタイプした時点で、複数の候補を表示するもの。「それを実現するには、Ajaxのような先読み技術だけでなく、並列分散処理などを駆使して高速に応答させる必要があります。そのためにはKVSをはじめとする、クラウドネイティブの技術をフルに取り込まなくてはなりません。技術開発は大変でしたが、山場は超え、まもなく皆さんにお見せできる予定です」(同)。
当然だがサジェスト機能のためだけではない。氏名を入力すれば、社名や住所などを引っ張ってきて自動的に埋め込む機能や、非構造データをERPの世界に取り込む機能なども実装しているという。最終的なリリースは2015年の夏以降を予定しており、既存のCOMPANYシリーズのユーザーには無料で新製品に移行できるようにする計画だ。
ワークスの新製品は並列分散処理を前提にするため、オンプレミスの物理サーバーや小規模な仮想サーバーには向かず、相当規模のプレイベートクラウド/パブリッククラウドで稼働させる必要がある、といった制約はある。そうであっても、文字通りにERPを「破壊的創造(Disrupt)」するものであることも確か。消費者向けの技術がデバイスだけではなく業務アプリケーションに及んできたこと、それが国産ERPベンダーから登場すること、に注目する必要があるだろう。
参考記事:エンタープライズアプリケーションを創造的に破壊せよ