[ザ・プロジェクト]

データから建設現場を“見える化”、最適化提案で顧客との信頼関係築く─コマツの最新デジタル戦略

「攻めのIT経営銘柄2015」戦略指揮官に聞く

2015年9月14日(月)川上 潤司(IT Leaders編集部)

建機を作るメーカーから、現場の最適化を支援するサービス事業者へ──。コマツが、2015年2月に開始した「スマートコンストラクション」でビジネス改革を加速させている。その具体的な内容や、目指す方向とはどういうものなのか。事業を指揮する黒本和憲氏(常務執行役員 ICTソリューション本部長)に話を聞いた(聞き手は川上潤司=IT Leaders編集長)。

──建設現場の全工程において、ICTの利活用で生産性向上や課題解決を図る「スマートコンストラクション」を2015年2月から始めました。建設機械を製造するメーカーとしては、かなり先駆的な取り組みですが、ここに至った経緯から伺いたいと思います。

コマツ 常務執行役員 ICTソリューション本部長の黒本和憲氏

黒本:当社は過去に多角化に走った時期があります。社内外で建設機械は成熟産業との考えが広がりエレクトロニクス分野に手を出したんです。しかし、残念ながらうまくいかず、2001年に坂根正弘が社長になった時に本業への回帰を宣言した。中国など新興国の成長を追い風に建設機械の需要は大きく伸びる。もう一回、建機に戻って“ダントツ”な商品を作ろうと。その意味は、他社が4~5年は追随できない特長を持った商品を世に送ろうということです。

 その具現化のためにガラっと変えたことの1つが「世界でワンデザインを通す」ということ。当社には、全世界に40の生産拠点がありますが、機械を共通化し複数の工場で生産できるようにする取り組みです。

 そもそも建機って、ローカル色が強いんですよ。道路一つ作るにしても、北米のやり方、ヨーロッパのやり方、あるいは南米、オーストラリアと、みなちょっとずつ違う。つまりは機械に対する要求が違うんです。地場には地場で建機メーカーがあるので、代理店からは地場メーカーに勝てるスペックと価格が求められる。それをそのまま受け入れると、多種多様なものを作らなければならないことになり、結果、品質維持や生産コスト低減が難しくなる。従来と一線を画したビジネスを立ち上げるには、どの市場でも受け入れられる“ダントツ”な特長を備えたワンデザインが必須ということから改革がスタートしました。

 この直接的な効果としては、同一機種を条件が最も有利な所で作り、出荷することが可能となり、需要や為替の変動などに世界規模でフレキシブルに対応できるようになりました。

ワンデザインゆえに情報の価値が高まった

──建機1台1台にGPS(全地球測位システム)を取り付けて稼働状況を把握することから始まった「KOMTRAX」の取り組みも、ほぼ時期を同じくしていますね。

黒本:KOMTRAXの商品化は1998年頃になりますが、標準搭載を決定したのは2001年からです。GPSのみならず各種のセンサーも進化してきていたので積極的に取り込み、当社が製造する建機はすべて工場出荷時点でテレマティクス機能がある状況となりました。

 当初はメンテナンスサービスの高度化から始まりました。機械をモニタリングしてると例えば冷却水の温度が高くなっているとか、フィルターが目詰まりしているということが分かるので、適切なタイミングで部品交換を提案することができる。トラブルが起きる前に対処できる点で新たなビジネス価値となったわけですが、もっとポテンシャルがあることに気が付くことになります。世界中から飛んでくる情報の価値が、ワンデザインゆえに増幅されるんです。

──どういうことでしょうか?

黒本:同じデザインでパフォーマンスも等しいはずの機械が世界各地で動いています。それらから集まってくる情報をじっくり観察すると、ある所では、変な壊れ方をしたり、燃費が明らかに悪いといったことに気付きます。つまり、我々の知識レベルが上がることで、機械のオペレーションの善し悪しが見えてきたのです。言い方を変えると、機械のモニタリングから、オペレータのモニタリングへと進化させることができたということです。

 そのデータがあれば、お客さんを訪問して、もっとこうすれば燃費が上がりますよ、生産性が上がりますよ、ということをアドバイスできるのです。「今までこんなデータ見たこともありませんでした」と先方も非常に驚きます。プレディクティブメインテナンスの域を超えて、現場における顧客価値に踏み込める点で、その意味は大きかったですね。

●Next:KOMTRAXはスマートコンストラクションへ

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