国産組み込みOSである「TRONプロジェクト」の提唱者として知られる東京大学教授の坂村健氏は現在、モノとモノをクラウドを介して連携させる「アグリゲートコンピューティング」を提唱している。「いつでもどこでも」の「ユビキタスコンピューティング」の発展形だ。坂村氏は、この考え方をそのままIoT(Internet of Things:モノのインターネット)に適用させた新プロジェクトの発足を2016年4月27日に発表した。世界6カ国7社の半導体メーカーが参加してスタートしたのが「IoT-Engineプロジェクト」だ。
坂村氏が東京大学大学院 情報学環ユビキタス情報社会基盤研究センターの協力で開発を進めている、オープンな規格に基づいたIoT向けのプラットフォームが「Open IoT Platform」。そのOpen IoT PlatformにつながるIoTチップのための標準開発環境が「IoT-Engine」だ。
IoT-Engineの基本的な考え方は、あらゆる処理はクラウド側で行い、モノには最低限の機能のみを搭載するというものだ。ここでいう「モノ」とは、「エッジノード」つまり組み込みシステムを搭載したIoTデバイスのことだ。坂村氏は「高度な機能はすべてクラウドで処理し、とにかくエッジノードは軽い必要がある」と力説している。
それを実現するのが、モノとモノをクラウドを介して連携させるというアグリゲートコンピューティングの考え方だ(図1)。組み込み製品は、ネットワークを介して特定のクラウドに直結させる。そのクラウドがAPIをオープン化し、他のクラウドと連携することでモノとモノの連携も成立する。
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エッジノードを肥大化させている要因の1つとして、セキュリティ対策が挙げられる。多くのIoTソリューションはデバイス側にもある程度の機能を持たせており、複雑なネットワーク連携が可能になっている。坂村氏はそのことが「つなぎ先を変更される」といったセキュリティリスクの要因となっていると指摘している。組み込み機器もセキュリティ対策が必要となり、肥大化を招いているというのだ。
そこで考えたのが、エッジノードをトンネリングでクラウドに直結させるという方法だった。特定のクラウドとの常時直結だけをエッジノードに課すようにすれば、少ない計算資源で単純かつ強固なセキュリティが実現できる。エッジノードとクラウド間は仮想的に常時直結されている状態のため、ローカルで複雑なガバナンス管理をする必要がなくなる。複雑な管理は、複数のエッジノードを管理するクラウド側の仕事となる。
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