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コニカミノルタのデジタル変革戦略、30年後も生き残る会社に向けた経営者の決意

2016年10月25日(火)中村 仁美

コニカミノルタがデジタルトランスフォーメーション(変革)への取り組みを加速させている。2006年に、それまでの本業だったカメラ事業と写真フィルム事業から撤退し、複写機などの開発・販売に舵を切った同社は今、どんな事業計画を描いているのだろうが。同社の代表取締役社長である山名昌衛氏が、「デジタルトランスフォーメーション〜コニカミノルタの成長戦略〜」と題し、ワークスアプリケーションズが主催した「COMPANY Forum 2016」の基調講演で語った内容から紹介する。

コニカミノルタの代表取締役社長である山名昌衛氏コニカミノルタ 代表取締役社長の山名昌衛氏

 「経営者として、時代をどう読み、どう会社を作り替えていくかについて、まだ道半ばではあるが、等身大で話をしたい」──。

 コニカミノルタの代表取締役社長である山名昌衛氏は、こう前置きした上で、同社のデジタルによる成長戦略について説明した。

目指すのは課題解決型デジタルカンパニー

 コニカミノルタは2003年、写真フィルムメーカーのコニカと、カメラ/複写機メーカーのミノルタの経営統合により誕生した。2006年には、本業だったカメラ/写真事業から撤退。現在は、複合機や印刷用機器、ヘルスケア用機器、計測機器などB2B(企業間)事業を中心に展開している。

 事業領域の選定の根幹にあるのが「ジャンルトップ戦略」。「成長が見込める領域、勝算のある領域にリソースを集中することで、各領域のトップ企業を目指す」(山名氏)という考え方である。これを前提に「今後、20年、30年と事業を継続できるように、デジタルトランスフォーメーション(変革)に取り組んでいる」(同)のが現在のコニカミノルタというわけだ。

 デジタル変革で同社が目指すのが「課題解決型のデジタルカンパニー」(山名氏)。自社で持つコアの技術や資産を活用しながら、「ITを使った各種サービスによって顧客企業の総務や経理、IT、マーケティングといった各部門が抱える課題をワンストップで解決する」もので、これを山名氏は「生涯価値モデル」と呼んでいる。これまでの同社のビジネスモデルは、情報機器や複合機などを単体で販売し、その機械が壊れたらが修理サービスに出向き、そこから契約更新につなげていくというものだった。

 ただ、デジタルカンパニーに変革するといっても単にかけ声だけでは変わらない。「意思決定の権限の移譲など、会社全体の仕組みそのものを変えていく必要がある」(山名氏)からだ。そこで採った施策の1つがM&A(企業の統合・買収)。2010年からこれまでに、66件のM&Aを実施した。対象は、地域密着型で付加価値が高いITサービスを提供している企業。「顧客基盤があっても、ITを絡めた新しいサービスを提案できる人材がいるわけではなかった」(山名氏)からだ。今後は、M&Aで得た企業が持っているサービスとコア技術の融合を図ることで生涯価値モデルを実現する。

エッジ型のCyber Physical Systemsを開発

 コニカミノルタがデジタル変革を考える際の基本にあるのが「Cyber Physical Systems(CPS)」である。CPSは、IoT(Internet of Things:モノのインターネット)の源流にある考え方。これを山名氏は「アナログの世界から実画像を取り込み、デジタルの世界でデジタルデータし、分析や予測、制御や可視化を行い、最終的には安心・安全・高効率・自動化といった顧客価値として提供するための仕組みだ」だと説明した(写真1)。デジタルな世界のデータ群は「デジタルツイン(双子)」とも呼ばれる。

写真1:コニカミノルタが考えるCSP(Cyber Physical Systems)の概念写真1:コニカミノルタが考えるCSP(Cyber Physical Systems)の概念
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 そのCPSで同社が目指すのは、クラウドでビッグデータを解析するような仕組みではない。「コニカミノルタならではのデバイスを提供し、そこから得られるデータを高速に処理する“エッジ型”のCPSを実現する」(山名氏)という。コニカミノルタのコア技術として山名氏は、3Dレーザーレーダー、分散処理型ネットワークカメラ、ビジネスマネジメントシステムなどを挙げる。

 3Dレーザーレーダーは自動車の自動運転への適用が期待される。現行のカメラやレーダーによる画像と比べ、「昼夜問わず200メートル先の歩行者や車をリアルタイムに正確に認識し、安全な自動走行をサポートできる」(同)からだ。レーダー技術は、特定エリア内に異常な行動者や侵入者だけを正確に検知するというセキュリティ用途での展開も検討している。

 ネットワークカメラは、セキュリティ領域のほかマーケティング分野への応用を始めている。例えばドイツのカーディーラでは、カメラにより来店客の行動を分析し、顧客ごとに興味のある商品を把握している。「POSデーからは、店舗を訪れても実際に商品を購入しなければ分析できなかった。ドイツの事例では、過去の試乗データとも連携し、来店客の成約率向上につなげている」(山名氏)という。

 ヘルスケア分野でも、CPSの活用検討が進む。「2025年には日本人の3人に1人が65歳以上の高齢者となり、介護スタッフの不足が懸念されている」(山名氏)ことから、介護現場からバックヤードまでの全業務の効率化を図る。センシング技術により、「介護スタッフのワークロードを分析し、転倒や事故があった際の家族への説明に使用したり、介護記録を音声入力することで交代時の引き継ぎを容易にしたりといった仕組みを考えている」と山名氏は話す。

 さらに、「マイクロ波センサーを使って体動データを取得することで、呼吸異常などがあればスマートフォンに連絡する仕組みの提供も検討している」(山名氏)と言う。既に複数の介護センターで、実証実験に取り組んでいる。ディープラーニング技術を組み込むことで「睡眠や覚醒の検知、寝返り検知や姿勢予測による褥瘡ケア、排泄行動予測などのソリューションが提供可能になる」(同)とする。

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