VAT還付をご存知だろうか。欧州への海外出張で使った費用が還付される仕組みのことで、すべてのEU加盟国が採用している。しかし実際には手続きが面倒なため、ほとんどの企業が還付を請求していないのが現状だという。出張・経費精算システムを提供するコンカーは、パートナー企業との連携サービスで簡単にVAT還付を受けられる仕組みを実現している。そのほかにも、出張にまつわる様々なサービスが、コンカーをプラットフォームとして次々と自動化・一元化されつつあるという。
VATはValue Added Taxの略で意味は付加価値税、日本でいう消費税だ。米国は未対応だが、すべてのEU加盟国が導入している。現地の企業は、仕入れと売上でVAT額を相殺しているが、現地で売上を持たない外国企業の場合、仕入れしかないため、その際に負担したVATを現地の税務署から還付してもらうことができる。
欧州のある国でVATの課税対象となる物品を購入したとすると、その支払いの際に外国人はVAT税を負担することになる。この負担した税額が還付対象となる。ホテル代やレストラン代、交通費など出張で使うEU圏で購入したほとんどの経費が対象となる。VAT税には還付制度があり、請求すれば当該国から還付を受けられる。
ところが、日本の企業でこのVAT還付制度をを利用している企業はほとんどないという。というのも、VATはすべてのEU加盟国に義務付けられているものの、税額は国によってまちまちだ。細かい手続きの制度も国ごとに異なり、しかも各国の制度自体も複雑になっているため、還付を請求する側にとっては非常にやっかいな業務となっている。請求は任意のため、結局多くの企業が還付の請求をあきらめてしまっているのが実情だという
このVAT還付を、旅費請求からの流れで簡単・スムーズに行う方法がある。
それを実現したのがSaaS型出張・経費精算システムでお馴染みのコンカーだ。同社でプラットフォームおよびパートナーソリューションの事業責任者を務めるJohn Gibbonバイス・プレジデントは「他社との連携で可能になった」としている。
プラットフォームとして連携推進
コンカーは、業務用のSaaSとしてはセールスフォースに次ぐ世界2位の売上高を誇る出張・経費管理システムを提供するSaaSベンダー。2014年からは独SAPの子会社となり、同社のクラウド事業拡大に寄与してきた。
そのコンカーがGibbon氏の指揮の元注力しているのが、パートナーとのサービス連携拡大だ。現在、グローバルで約130社のパートナーを抱えている。VAT還付は、世界的なVAT還付申請プロバイダーであるアイルランドのTaxback Internatioanlとの連携により実現したサービスだ。
具体的には、コンカーに蓄積された出張先での経費データからVAT還付に必要なデータを抽出し、Taxbackが申請データの作成から当局への提出まで、還付に必要な面倒な手続きの一切を代行する。Taxbackからは手数料を控除したものが払い戻される。極端な例だが、10億円の経費で約4千万円還付される可能性もあるという。
コンカーでは、Taxbackのように経費精算や出張精算と連携することでユーザーの利便性を向上する他社サービスとの連携を急速に拡大している。このようなコンカーをプラットフォームとした外部サービスは、「Concur App Center」というマーケットプレイスで選択できるようになっている。
CEOのSteve Singh氏は「コンカー1社で、すべてのユーザーが抱える経費関連の問題を解決できるとは考えていない。しかし、パートナーと組むことで、より多くのユーザーの問題を解決できるはずだ」と語っており、これを具現化したのがApp Centerということになる。
2011年にサービスを開始したApp Centerでは、一般社員向けの「Apps For Me」と財務・経理部門向けの「Apps For My Business」という2つのカテゴリを設けている。Apps For Meは、最終的には企業に請求するにせよ、とりあえず個人のスマホアプリとして利用するサービスのことで、Apps For My Businessは、企業登録してコンカーのデータが財務・経理部門に直結するサービス。最初に紹介したVAT還付などはここに含まれる。