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技術力とノウハウを礎に各社各様のIoTニーズに全方位で応える

2017年3月23日(木)

IoTに早期から着目し、様々な実績を積んできたKDDI。回線サービスのみならず即効性重視のクラウドや豊富なデバイス群とも連携させながら、顧客個別のニーズに応える体制の整備に余念がない。その強みと独自性はどこにあるのか──。

 戸建て住宅の基礎部分に地震・加速度センサーを設置。初期微動(P波)を検知したなら、より大きな第二波(S波)が到達する前に住人に警告を発する。万一、大規模な地震が発生した際には、建物ごとの被災度を速やかに把握し、優先して支援に向かうべき場所を特定することもできる。さらに、同様の仕組みで複数の住宅から揺れの情報を集約する、つまりは“面”として地震の影響を分析すれば、エリアごとの地盤の特性が浮き彫りになる。もし、相対的に地盤が弱いと思われる場所を客観的なデータに基づいて説明できれば、自治体さまに提案することも可能だ──。

 これは、ミサワホームが実際に運用を開始している被災度判定計「GAINET」の概要である。IoT(モノのインターネット)を筆頭とするデジタルテクノロジーと、そこから収集し得る大量のデータを対象としたアナリティクス。その掛け合わせを新しい事業価値に結び付けている好例ととらえることができるだろう。

 このように、ICT(情報通信技術)の進化と普及が、ビジネスの可能性をますます拡げようとしている。業務の生産性/品質の向上など経営活動を“下支え”することが従来のICTの主な役割だったが、昨今では、ICTがあってこそ成り立つ事業モデルも続々と登場するようになった。経営とICTは渾然一体となり、まさに今後の成長エンジンそのものであるという認識も広がっている。そうした状況下にあって、とりわけ大きな期待を集めるテクノロジーの筆頭に挙げられるのがIoTだ。より最適なサービスや、より豊かな体験を創り出すには、モノや人の状態を克明にとらえることが必要不可欠であり、それを具現化するのがIoTだと目されているためである。

KDDIのIoT推進本部でビジネスIoT企画部長を務める原田圭悟氏

 この領域に早期から着目し、豊富な実績とノウハウを蓄積してきているのがKDDIだ。「IoTが本格的に幕開ける前、M2M(Machine to Machine)という概念が注目され始めた頃からアクションを起こし、様々な事例を手掛けながら地歩を固めてきました」。こう話すのは、同社のビジネスIoT推進本部でビジネスIoT企画部長を務める原田圭悟氏だ。

 例えば2001年にセコムが本格運用を始めた「ココセコム」。お子様やご高齢の方にGPSなど位置を特定するセンサーを備えた専用端末を所持いただき、いざという時に備えて見守りサービスを提供するもので、ここでのデータ通信機能の実装を担ったのが同社である。その後も、自動車メーカーと協業しカーナビをはじめとする車載機器に通信モジュールを組み込んで付加価値を創出する取り組みなどに注力。M2M/IoTが活況となることを見越して、閉域ネットワークやグローバル通信プラットフォームなどを着々と整備してきた。「人や住宅を対象としたセキュリティ、乗用車/商用車を対象としたテレマティクス、近年では電力会社のスマートメーターなどに採用が広がり、法人向けM2M/IoT回線の契約は急速に拡大しています」(原田氏)。

クラウドからデバイスまでを組み合わせた
ワンストップソリューションに注力

 KDDI=回線サービスに軸足を置くプレーヤーと短絡的にとらえがちだが実態は異なり、IoTに関わる広い領域をカバーしている。具体的には、データの保存や分析、アプリケーションの開発、外部連携などを司る「クラウドサービス」を整備している一方、2000種を超える多種多様なセンサーやタブレット端末、セキュリティ対策を考え抜いた通信モジュールをはじめ「デバイス」の拡充にも余念がない。つまりは、「顧客がやりたいこと」を早期にワンストップで実現するためのポートフォリオを全方位で揃えているのがKDDIの特色である。

 2016年12月には、従来から提供してきたワンストップソリューションを拡充・強化する一環として「KDDI IoTクラウド Creator」と「KDDI IoTコネクト Air」を発表。前者は、同社のIoTクラウド基盤を活用しながら、最短2週間のアジャイル開発サイクルを回し、システム、アプリケーションの構築や改善活動を徹底的にサポートする。後者は、1日10円の基本料金や1MBあたり0.2円からのデータ通信料など、IoTに特化したシンプルかつ安価なIoT向け回線サービスだ。原田氏は、「テクノロジーの進化、あるいはお客様の想定利用シーンの多様化に照らしながら、今後も様々なサービスを提供していきます」と強調する。

 もっとも、多くの企業がIoTに関心を寄せながらも「ビジネス価値に結び付けるためのアイデアがなかなか出てこない」「実際に取り組んでみたいが敷居が高い」といった悩みの声は尽きないようだ。「これからはオープンイノベーションの取り組みや、PoC(Proof of Concept)などの実証実験を通して可能性を探っていくアプローチが欠かせません。当社としても“モノ売り”の発想を捨て、お客様と共に新たな事業価値を創っていくことを目指して参ります」(原田氏)。

 顧客と喧々諤々と議論を重ねることになるスタッフに対しては目下、デザインシンキングの手法を教育するなどして「アイデアを形にする」スキームを磨いているという。また、様々な事業領域で独自の強みを持つ顧客同士のハブとなり、相乗効果を生みそうなケースに積極的に紹介することも始めている。

 「取り組みの敷居が高い」という声に対しては、手軽にIoT環境を試してみることのできるソリューションを用意する。その具体例の1つとなるのが、この1月から提供を開始した「LoRa PoCキット」だ。これは、ソラコムとの協業のもと、省電力かつ広範囲のカバーを特徴とする無線通信規格「LoRaWAN(TM)」を活用したIoT環境を検証するためのワンストップソリューションである。LoRa対応のデバイス10台とゲートウェイ1台、「KDDI IoTコネクト Air」対応のルータ1台、さらに6カ月分の通信費や管理コンソール利用料、サポート費用をパッケージにしたもので、120万円ほどの価格帯で提供する。「可搬型であり色々な場所に持ち込んですぐに試すことができます。まず実際にやってみて効果を確かめる。そんなスモールスタートを可能にします」(原田氏)。

「LoRa PoCキット」のシステム概略図
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 その一方、多くの企業にとって汎用性のある新サービスでIoTの裾野を開拓する。2017年2月に発表した「KDDI IoTクラウド~トイレ空室管理~」「同 ~トイレ節水管理~」はその具体例となる。空室管理は、トイレの扉に設置するマグネットセンサーで開閉を検知し、スマートフォンで混雑状況を確認したり、体調不良で長時間こもっている人を早期に察知したりすることを可能にする。節水管理は、トイレ個室内に設置する人感センサーとフラッシュバルブを連携し、利用者の滞在時間によって適切な水量の流し分けを実現するものだ。ある実証実験においては約620万円だった月額水道料金を約140万円まで抑える効果があったという。

最先端の通信技術を常にキャッチアップ
グローバル通信基盤にも独自の強み

 IoTという新しい市場においては今、様々なプレイヤーが登場し、それぞれの立ち位置から多彩なサービスやソリューションを展開している。そうした中「通信キャリアとしての技術力やこれまでのノウハウ、グループ全体で蓄積しているデータ、他社と柔軟に連携する力などで当社の強みを際立たせられる所が多々あります」と原田氏は訴求する。

 IoTに利用される通信技術に関して言えば、すべて一律ということにはならず、利用エリアの広さや通信速度、バッテリーの持続性など、用途やニーズに応じて適正なものを選択する必要がある。その点においてKDDIはLTEやLPWA(Low Power Wide Area)など、様々なバリエーションに対応することができる。IoTの適用対象が自動車なのか、ビルファシリティなのか、はたまた農地や河川なのか、それぞれのシーンに応じた最適解を提供することが可能だ。もちろん、セキュリティへの配慮も抜かりはない。

 企業によってはIoTをからめたサービスを海外にも展開したいというニーズもあるだろう。この場合、KDDIがトヨタ自動車との共同で取り組んでいる「グローバル通信プラットフォーム」の基盤技術とノウハウが活きてくる。“コネクテッドカー”をワールドワイドで推進するにあたっては、国や地域ごとにDCM(データ・コミュニケーション・モジュール)の仕様が異なるという現実に起因する様々な運用上の問題をクリアしていく必要がある。ここで両社は、単一のDCMを車両に搭載し、SIMの設定情報をネットワーク経由で書き換えることで選定した通信事業者に直接接続することを可能としている。すなわち、ローミングに依存せず、低価格かつ高品質の通信を確実に利用することができる環境を整備したわけだ。

「グローバル通信プラットフォーム」の概略図
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 「例えば各種のセンサーや通信モジュールをテレビに組み込み、どこで使われているか、故障の前兆はないか、どんな番組を視聴しているかといったことを把握するアイデアがあったとします。従来であれば、各国のキャリアと個別に交渉したり事前検証したりはもちろんのこと、サービス開始後のトラブルシューティングにも多大な時間と労力を要し、結果的にコストが膨らむ構図になっていました。我々の方式であれば、デバイスを統一し、全世界でシームレスかつダイナミックに統合運用することができますし、KDDIの現地法人のスタッフが手厚くサポートする体制もあります」(原田氏)。

 KDDIが、auの携帯電話サービスなどを基軸として大量のデータを蓄積できている強みも見逃せない。ユーザーの同意の元に取得している情報を積み上げて行けば、例えばエリアごとの人流データなどとして価値を見いだすことができる。自社がIoTで収集するデータとKDDIが保有しているデータをうまく組み合わせたり、それらを分析したりすることで、新たな洞察、ひいては新たな事業に結実する可能性がぐっと高まるわけだ。ここに同社とタッグを組むことの大きな意義が見えてくる。

 デジタルタコグラフなどの車載機器から運行スピードを把握する。路面に記された「40」といった制限速度などをカメラで認識する。それらのデータを組み合わせるだけでもドライバーに注意喚起を促すことができるが、さらに学校やバス停などの所在を示すオープンデータや、KDDIが持つエリアごとの人流データ情報(KDDIがお客さまから同意の上取得し、誰の情報であるかわからない形に加工した位置情報データ)を組み合わせることで、より多面的な安全運転促進につなげることができる。それは、保険契約の個別最適化や、自治体のガードレール設置計画見直しなど、他の価値として波及することも十分に考えられる。

 IoTのビジネス活用は、自社の枠に閉じて、しかも机上であれこれ考え抜いてもなかなか前に進めないもの。小さいことからでもよいので、まず何か始めてみる。先駆けた事例を参照して、これはというものは貪欲に取り入れてみる。具体的アクションの先にヒントが見つかり、そこから目指すべき方向が定まってくるととらえたい。つまりは仮説検証や試行錯誤を実直に積み重ねること、その際には社外の力を積極的に借りることが重要な視点だ。

 原田氏は最後にこう強調する。「何か課題や悩みがあれば是非、当社にご相談ください。我々が手掛けてきた事例や、技術や業界の動向、経験に基づくノウハウに照らして、必ずお役に立てるお話ができると自負しています」。


KDDI株式会社

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