テラデータとNTTデータに見るAI市場へのアプローチ
2017年5月29日(月)五味 明子(ITジャーナリスト/IT Leaders編集委員)
IT関連の発表会やイベントに参加して、「AI(Artificial Intelligent:人工知能)」という言葉を聞かない日はまずないのが昨今の状況だ。企業も当然ながら関心を高めているが、ビジネスへの適用という観点では、まだ緒に就いたばかり。“これからの大市場”に大手ITベンダーやSIerは、どうアプローチしようとしているのか。テラデータとNTTデータの動向に触れる機会があったので、紹介しよう。
Google傘下のDeepMindが開発したAIエンジン「アルファ碁」と、世界No.1棋士である中国の柯潔九段の対局。2017年5月23日からの全3局にわたる勝負において、アルファ碁は全勝をおさめ、AIの実力をあらためて世界に知らしめる結果となった──。
2017年のITトレンドを象徴するキーワードとして、間違いなく上位にランクインする一つは「AI」だろう。AIは今やITという範疇を超え、グローバル全体で強い興味/関心を引き寄せるバズワードとなっている。
ビジネスへの応用を検討する企業が増える一方で、AIそのものに対する誤解や理解不足といった側面もまたクローズアップされている。「人間の知能を超えるAIによって仕事を奪われるのでは」「シンギュラリティ(技術的特異点)の先に社会の混乱が起こるのでは」など、近い将来に不安を抱く声は少なくないようだ。
そうした中、ITベンダー各社はAIという最先端テクノロジーをいかに顧客に理解させ、そのビジネスにコミットしていこうとしているのか。今回は外資系ベンダーと国内大手Sierという対照的な立場にある、日本テラデータとNTTデータのアプローチを紹介しよう。
テラデータ:ビッグデータアナリティクスのコンサル集団「Think Big」が急先鋒に
日本テラデータは5月23日、都内において年次カンファレンス「Teradata Universe 2017」を開催し、いくつかの大型事例を発表した。中でもひときわ注目されたのがアイシン・エィ・ダブリュ(以下、アイシンAW)によるデータレイクの活用事例だ。
アイシンAWはオートマティックトランスミッション(AT)やカーナビシステムなどで世界トップクラスのシェアや技術力を誇る自動車部品メーカーで、コネクテッドカーや自動運転車への研究開発も積極的に進めている。今回のカンファレンスにおいては、1km先あたりで刻一刻と変わりゆく道路の混雑状況や、交差点を曲がった先で必要となる危険回避など“近未来”の予測にテラデータのデータレイク技術を活用していることと明らかにした。
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ここでデータレイクの元となるのは、車載カメラで撮影した道路周辺の画像データや地図/ロケーションデータ、車両センサーデータなどである。こうしたデータを対象にディープラーニング技術でもってリアルタイムでの物体識別や物体検出、シーンラベリングなどを行い、精度の高い渋滞予測やそれに対する警告などを可能にしている。また、データレイクから動的情報と静的情報を組み合わせ、コンテンツ化する技術にも取り組んでいるという。こうした技術がより進化すれば自動運転の精度や安全性が高まり、まさに近未来のクルマ社会の実現が近づくことになる。
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