先進各国でキャッシュレスやモバイル電子決済の普及に弾みがついている。現金を持ち歩くより安全だし、利便性や効率性などの観点でもメリットは大きい。日本も負けず劣らず進んでいると思いきや…今回は筆者の体験を元に実態を見てみよう。
1泊2日の国内出張のために羽田空港に向かった時である。リムジンバスに乗るチケットを購入しようとした際に財布を忘れてきたことに気付いた。取りに戻る時間はないし、現金もクレジットカードもない最悪の事態だ。気持ちは混乱するも、この事態をどう切り抜ければ良いかで頭はフル回転していた。出張先の空港まで辿り着ければ知り合いがいるから何とかなる。まずはリムジンのチケットを購入しなければならない。
ふと交通ICカードのPASMOで買えるのではないかと気付いた。定期的にチャージしていて必要な残額はあり、リムジンバスのチケットを買うことができた。と同時に安堵の気持ちとその後を考える余裕も出てきた。その時スマートフォンにはApple Payに登録した電子マネーのiDがあることを思い出した。クレジットカードを1枚持っているのと同じではないか。カードがあれば何とでもなる時代だ──。
ところが、その考えは甘かった。リムジンバスで羽田空港までは行けた。待ち時間にラウンジに行こうとしたが、ラウンジを使えるカードの現物は持ってきていない。スマートフォンに登録したカードでは番号も確認出来ないので、ラウンジを使わせてもらえなかった。仕方なくPASMOを使ってカフェでコーヒーを飲む。次に訪問先に持っていく手土産を買おうとギフトショップで電子マネーが使えるかを訊くと、「Edyは使えるけどiDは使えない」という。
PASMOには手土産を購入するほど残額がない。やむなく手土産を購入できないまま搭乗することになったが、捨てる神あれば拾う神あり。電子マネーを使って機内販売で手土産を購入することができた。しかしその後ほとんど電子マネーは使えず、結局、現金を拝借して対応せざるを得なかった。
日本は電子マネーに出遅れたと言われている
グローバルに見ればキャッシュレスやモバイル電子決済は急速に進んでいる。現金を持ち歩くより安全だし、利便性も高く、効率や管理から考えて店舗のメリットも大きい。日本でも電子マネーの展開はいろいろされてきている。仮想通貨もその一つだが、話を単純にするために仮想通貨は外しておくこととする。
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