マツダは、ITシステムの開発用基盤として、本番環境で使っているデータベースを開発環境のデータベースにコピーして運用するためのデータベース仮想化ソフトウェア「Delphix」(開発元:米Delphix)を導入した。Delphixを販売したアシストが2018年11月15日に発表した。
テストデータの整備・利用に多大な楼料と時間を費やす
自動車メーカーのマツダはこれまで、ITシステムのテスト工程の効率化に着手してこなかった。そのため、テストデータの準備や、複数の開発者のテストによるデータベース更新の競合を回避するための調整に、多大な工数がかかっていたという。
ITシステムの単体テストにおいては、同一のデータベースを複数のプログラムから利用する形になる。このため、競合を回避するために、それぞれ個別のローカルデータベースを構築して利用する。これまで、この作業に多大な労力と時間をかけていたという。
テストデータの取り込む際には待ち時間も発生していた。テストケースに応じて、1日に何度も待ち時間が発生していた。開発要員が多い大規模案件ほどトータルの無駄時間が大きくなっていたという。
「また、テストケースに応じたテストデータは、現行システムを熟知した担当者が複数テーブル間のデータの整合性を考慮して作成しており、データ取得や保管も手作業のため、多大な工数を要した」(マツダ)
テストの実行時も、最初のテストケースでデータを更新した後で、次のテストケースを実行する前にデータを手動で戻す必要があるなど、データの切り戻しが発生していた。テストケース数×実行回数でこの作業が発生することになり、テスト全体の時間が伸長していたという。
この問題を解決する手段として、テスト環境を素早く構築できる製品として、アシストが国内販売するデータベース仮想化ソフトウェア「Delphix」を導入した。
Delphixは、RDBMS(リレーショナルデータベース管理システム)のデータを複製し、フロントエンドとなる複数のRDBMSから多目的に利用できるようにする。外部にある本番系のデータベースと同期し、Delphix内に構築した複数の仮想ストレージにデータをコピーする(図1)。

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DelphixのPoC(概念検証)は2018年1月に開始し、パイロットプロジェクトで2018年4月から7月にかけて利用した。2018年10月には400人月規模のプロジェクトで利用を開始した。2020年には、レガシーシステムのモダナイゼーション(現代化)も開始する。
テストデータを迅速に複製・配布、データの巻き戻しも容易
マツダは、Delphixが簡単かつ迅速にデータベースを複製、配布できることと、取得時の状態に簡単にデータを巻き戻せることに着目し、テストの効率化に有効だと考えた。Delphixによって、テストデータの準備が容易になった。ローカルデータベースを個別に作成する方法をやめ、元となるデータベースから複製機能で人数分作成・配布する方法に変更した。
テストデータは、データベースの特定のタイミングの「断面」を取得できるため、手作業でデータを作成、保管する必要がなくなった。テスト実行時は、繰り返しテストを実施する際や、テストケースを切り替える際に、データを巻き戻すことで簡単に対応できるようになった。
見込効果の事前検証を実施し、想定どおりの効果が得られたことから、Delphix導入を決定した。国内の流通におけるITシステムのプロジェクトでDelphixの利用を開始したことに加え、今後数年間にわたって実施するレガシーシステムのモダナイゼーション(現代化)プロジェクトでも利用を予定している。