[木内里美の是正勧告]

ダイナミクス欠く日本、「判断を持ち帰る習慣」はなぜだ?

2018年12月21日(金)木内 里美(オラン 代表取締役社長)

テクノロジーの動向や、製造業、サービス業を見ていると進化のスピードがさらに上がっているように感じる。デジタルトランスフォーメーション(DX)にも拍車がかかってスピードが求められている。世界は米国、欧州、アジアの3極構造から米国、欧州、中国、ロシア、インド、日本の6極という見方も出ている中で、本当に日本は大丈夫なのか。6極であり続けられるのか。

日本が取り残されていく懸念

 企業が新しい概念や商品やサービスを打ち出していくダイナミクスは成長の証であり、躍動を覚える──。最近、そのような話題が絶えない産業が見当たらなくなった。株価だけは維持していても、資金は投資に回らず内部留保されて塩漬け。あるいは自社のR&DよりM&Aに走って技術も売り上げも外部に依存し、過剰投資が経営を毀損したりしている。

 日本が一貫して強みを持っていたのが製造業だ。ゲームや漫画やアニメのエンターテイメントサービス、観光のおもてなしサービス、公共の生活基盤を支えるインフラサービス、小売り流通や配送のサービスなどきめ細かさを内在させているサービスも得意分野だろう。しかし製造業にはかげりが見え、きめ細かなサービスには劣化あるいは陳腐化がうかがえる。

 以前から、商品の多くに「Made in China」の表示が増えてはいた。年を追うごとに品質もコストパフォーマンスもよくなっており、気がつけば多くの分野の製品で日本は中国に追い抜かれた。衣料品でMade in Japanを見ることは稀になり、ブランド品でもMade in Chinaである。公共インフラサービスでも世界の動向に逆行して水道事業の民営化をしやすくする法改正がなされた。以前から日本にも進出しているフランスのヴェオリア・ウォーター(Veolia Water)が利益本位で暗躍することだろう。本国のパリでさえ再公営化にスイッチしたというのに。

 ゲームも多額の資金を投じた高精細グラフィックスの米国製が人気を集めている。日本のきめ細かなサービスは誤った働き方改革によってどんどん失われていく。日本は確実にジリ貧モードに入っているように見える。

「判断を持ち帰る習慣」が問題の1つ

 日本人のテクノロジー視察団が、米国のシリコンバレーでもイスラエルでも、あるいは中国の経済特区である深圳でも嫌われている話は良く耳にするし、直接、聞くことも多い。なかなか商談につながらないからだ。バブル時代のような観光ツアー型の視察団はなくなったとしても、一方的な見るだけ視察団が増えている。たとえ導入できる技術やコラボレーションできそうな企業と出会っても、「持ち帰って検討させていただきます」としか言えない。帰国後にレポートをまとめて経営者に意思決定を仰いでも、現場の感覚は伝わらないから、それっきりだ。

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