2つの「ロス」が気にかかっている。1つは、食べられるのに捨ててしまう「食品ロス」の問題で、もう1つは、使えるのに資産除却や廃棄処分せざるをえない「システムロス」の問題だ。いずれも、いかにして膨大な無駄を食い止めてロスを減らせるだろうか。
ここ数年、2月になると大量に売れ残った恵方巻きが廃棄される報道がある。豊作で嬉しいはずのキャベツなどの農産物が、値崩れを招くので出荷されずに処分される報道もよく目にする。期限切れのコンビニ弁当しかりで、「もったいない」と眉をひそめる向きも多いことだろう。
このような、いわゆる食品ロスについては環境省が実態を調査している。直近のデータは2015年度のものだが、総量は646万トンに達し、飢餓地域への世界の食料支援量の2倍と言われている。ピンと来ない数字だが、「国民1人あたり51kg」と読み替えれば多さを認識しやすいかもしれない。何しろ年間800万トン強とされる米の収穫量とたいして変わらないのだ。646万トンのうち約45%の289万トンが家庭から廃棄されている(図1)。
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事業者側から見た食品ロスは過剰生産や規格外、売れ残りによる返品・廃棄、レストランなどでの食べ残しなど、流通過程や消費過程で起こっている。家庭からの廃棄は食べ残しや賞味期限・消費期限切れの食品と思いがちだが、“過剰除去”と呼ばれる野菜や果物の剥き過ぎや、調理で捨てられる部分がロスの半分以上を占める。
意識や工夫によって防いだり利用したりできるはずの食品ロスが一向に減らない中、政府は2030年までに家庭から出る食品ロスを半減する目標を掲げ、食品ロス削減法案を今国会で成立すべく動いている。ベンチャー企業による飲食店の食品ロスを減らすサービスも登場した(関連記事:ITでフードロスを減らせ─元料理長とWebディレクターが開発した「TABETE」)。
救いのないシステムロス
食品ロスを考えるとき、思い至るのが「システムロス」である。と言っても、日本の親会社と海外の子会社の双方が赤字状態になることを意味する税務上のシステムロスではなく、まさに使えるのに資産除却や廃棄処分になっていく情報システムのことである。
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