[木内里美の是正勧告]

調剤薬局の事務から分かる、医療データ活用の惨状

2019年4月17日(水)木内 里美(オラン 代表取締役社長)

調剤薬局事務の助っ人を頼まれた。やるなら仕組みを理解したいと思い、事前にレクチャーを受けて臨んだ。そこで見えてきたのは、不合理な医療分野の仕組みと、つながってしかるべきなのにつながらないシステムやデータである。

 ひょんなきっかけで調剤薬局の事務を手伝うことになった。急に退職してしまった事務職の代わりで、臨時の助っ人である。調剤薬局の仕組みを知りたいという好奇心が勝っていたのが本音かもしれない。仕事は薬局専用のPCソフトを使って処理していくので、事前にソフトメーカーの担当者からレクチャーを受けた。

 流れは概ね次のようなものである。

(1)処方箋を持って薬局に来た患者さんに、処方箋と健康保険証、お薬手帳の有無を確認して預かる。

(2)生年月日を入力すると再来の場合はデータが出てくるので、保険証の有効性を確認する。社会保険から国民健康保険に変わっていたときは患者さんに確認して修正する。初めての患者さんの場合はアレルギーなどのアンケートを記入してもらい、その間に基本データをすべて入力する。

(3)処方を受けた病院・クリニックと担当医師をデータベースを参照して確認し、処方箋に記された薬品、用法、用量、注意書きを入力する。薬品は成分名で書かれているので、先発薬と後発薬(ジェネリック)で薬品名が異なることに注意する。本人の希望と薬局の在庫を照らし合わせてデータベースから選択していく。

(4)入力が済んだら再確認し、確認のために処方箋の裏にプリントする。同時に「薬情」と呼ばれる薬の写真と説明が書かれた薬剤情報提供書と、「薬袋」と呼ぶ用法用量が書かれた紙袋とお薬代の請求書をプリントする。

(5)必要なところに処理者の印鑑を押し、処方箋以外をまとめて薬剤師に渡す。

 この作業の繰り返しなのだが、間違いは許されないし、患者さんを待たせたくない気持ちもあってプレッシャーがかかる。処方箋が5枚も6枚もたまると明らかにストレスを感じる。最後の患者さんの処理が済んだときの疲労感と開放感は、今までに感じたことのないものだった。

先が見えないPHRと医療費用の低減

 この体験から、不合理な医療分野の仕組みが見えてきた。

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