[ユーザー事例]
DXの前提となるビジネスプロセス変革─シーメンスや北米トヨタ、ドイツテレコムらはどう挑んだか
2019年6月14日(金)田口 潤(IT Leaders編集部)
米ペガシステムズ(Pegasystems)主催のPegaWorld 2019で、独シーメンスや米空軍研究所、北米トヨタなどがビジネスプロセス変革の取り組みを公開した。適用業務は各社各様だが、CoEを置くことやアジャイルアプローチを採用することなど共通点も少なくない。本稿では、事例セッションの内容を中心に、デジタルトランスフォーメーション(DX)の前提として各社が取り組んだビジネスプロセス変革のアクションをレポートする。
●PegaWorld 2019レポート[技術動向編]はこちら(変貌するBPM、ビジネスプロセス変革の最前線に─iBPM、そしてケースマネジメントへ)
Pegasystemsは、北米・欧州を中心に約3000社の顧客に持ち、その多くが大手企業である。社名を挙げると、アメリカン・エキスプレス(American Express)、HSBC、マスターカード(MasterCard Worldwide)、ロイヤルバンク・オブ・スコットランド(Royal Bank of Scotland)、チューリッヒ保険(Zurich)、コカ・コーラ(Coca-Cola)、GEヘルスケア(GE Healthcare)、シーメンス(Siemens)、シスコシステムズ(Cisco Systems)、デル(Dell EMC)などだ。また、米財務省(U.S.Department of the Treasury)、米連邦捜査局(FBI)、米空軍研究所(Air force research Lab)のように政府機関も少なくない。
日本ではまだPegaの名前が広く知られていない。とはいえ、みずほ証券や三菱UFJファイナンシャルグループ、東京センチュリーなど金融関係を中心に顧客層を広げている。

PegaWorld 2019では、そうしたユーザー企業による事例セッションが30以上開催された。時間が重なっていて全部は聴講できない。そこで、主にiBPM/ケースマネジメントへの取り組みを語るセッションに参加した(写真1)。動機としては、そもそも筆者がビジネスプロセス変革に強い関心があったことに加えて、GartnerやForrester Researchなどの米IT市場調査会社の評価を見るに、CRM市場ではSalesforce.comに次ぐ2番手だがiBPM市場ではリーダーに位置する点と、今後、日本でPegaが広がるとすればiBPMが先行する可能性が高い点からである。
次ページの表1に、セッションごとの概要をまとめた。業種・業態や業務内容が異なり、講演者のスタンスも当然違うので共通点はあまりない印象だったが、それでも、(1)司令塔・調整役としてCoE(Center of Excellence)を設置している、(2)標準化するプロセスと現場に委ねるプロセスを分けている(強引なプロセスの標準化はしない)、(3)アジャイルアプローチを採用している、(4)事前準備や計画に時間をかけている、といった点は似ていたと思う。同じPegaのソリューションを採用するせいかもしれない。
以下では、なかでも注目の事例をいくつか取り上げて報告する。その前に、基調講演に登壇した米マサチューセッツ工科大学(Massachusetts Institute of Technology:MIT)の情報システム研究者、Jeanne W.Ross氏による「Designed for Digital:How Companies Transform for Sustained Success(デジタルに向けた設計:企業は継続的な成功に向け、どう自己変革するか)」と題した講演を紹介したい。「プロセス変革はデジタルトランスフォーメーションの前提」といった趣旨で示唆に富むからだ。なお同名の書籍が9月にMITから出版される予定である。
●Next:ビジネスプロセス変革に取り組んだ主要ユーザー企業の取り組み一覧
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