ガートナージャパンは2019年6月25日、ブロックチェーンを活用したITプロジェクトを成功させる上での注意点を7つ発表した。総括として、ほとんどのブロックチェーン活用事例はデータを記録するためにしか使っていないので、ブロックチェーンの特性を活かしたプロジェクトへと移行すべきだとしている。以下、米Gartnerが2019年6月12日(米国現地時間)に発表したリリースの抄訳から紹介する。
ブロックチェーンは高い関心を集めているが、こうしたハイプ(過剰な期待感)と市場の実態は依然としてかけ離れている。米Gartnerが3000人を超えるCIOを対象に実施した調査「2019年CIOアジェンダ・サーベイ」では、ブロックチェーンを導入済み、または近く導入予定であると回答したCIOの割合は11%だけだった。プロジェクトの大半が、初期の実験段階よりも先に進んでいない。
ブロックチェーンを活用したITプロジェクトを成功させるためには、失敗につながる原因を理解しておかなければならない。米Gartnerは今回、ブロックチェーンを活用したITプロジェクトにありがちな失敗(落とし穴)を7つリストアップ。さらに、失敗しないための回避策を提示している。
- ブロックチェーン・テクノロジを誤解または誤用する
(Misunderstanding or Misusing Blockchain Technology) - ブロックチェーン・テクノロジを、本番環境向けに準備が整っているものと見なす
(Assuming the Technology Is Ready for Production Use) - プロトコルとビジネス・ソリューションを混同する
(Confusing a Protocol With a Business Solution) - ブロックチェーンをデータベースやストレージのメカニズムとして単純に捉える
(Viewing Blockchain Purely as a Database or Storage Mechanism) - 相互運用性の標準が存在していると考える
(Assuming That Interoperability Standards Exist) - スマート・コントラクトの課題は解決済みであると見なす
(Assuming Smart Contract Technology Is a Solved Problem) - ガバナンスの問題を見過ごす
(Ignoring Governance Issues)
落とし穴の1つは、ブロックチェーンである必然性がないプロジェクトになってしまうことである。米Gartnerでは、「ブロックチェーンの機能セット全体を使っている組織はほとんどない。そもそもブロックチェーンが必要なのかという疑問が生じている」と指摘する。
CIOが優先すべき課題は、ブロックチェーンの特性を活用したユースケースを明確にして、ブロックチェーンの特徴を生かせるプロジェクトへと移行することである。例えば、ブロックチェーンの主要機能として、非中央集権型の合意形成、トークン化、スマートコントラクトといった機能がある。
現状では、ブロックチェーンプロジェクトの大半が、分散型台帳(DLT)としてしかブロックチェーンを使っていない。データを記録するためだけにブロックチェーン基盤を使っている。
別の落とし穴として、ブロックチェーンをデータベースやストレージのメカニズムとして単純に捉えてしまうことがある。米Gartnerでは、「ブロックチェーンプロジェクトのデータ管理に関する要件を、ブロックチェーンの機能や特性と照らし合わせる必要がある。場合によっては、従来のデータベースを選択する方が適している」と指摘する。
ブロックチェーン技術は、信頼性が確かではない参加者による自由なやりとりを可能にすべく、変更不可能で信頼できる記録を保持するように設計してある。この点は従来のデータベースに対する優位性となるが、逆にブロックチェーンは、従来のデータベースには備わっている複数の機能を備えない。
現在のブロックチェーン技術は、データベースが持つ「作成」、「読み取り」、「更新」、「削除」の機能群をすべて網羅しているわけではない。ブロックチェーン技術で提供しているのは「作成」と「読み取り」だけである。