[木内里美の是正勧告]

業務改善にプロセス可視化は必須、ただし本質を見極めよ!

2019年12月25日(水)木内 里美(オラン 代表取締役社長)

日本のIT業界で半ばブームと化したRPAだが、業務改善の救世主のような扱いには強い違和感があり、本コラムでは安易にRPAを導入することの問題点、危険性を再三指摘してきた。ユーザーが局所最適な手法に頼る前に必須でやるべきことがある。

 筆者は本コラムで過去2回、RPAについて書いたことがある。最初は2017年4月。「RPA導入と危険な匂い」と題して、プロセスの可視化もしないでRPAの導入をすれば使えないロボットが溢れておぞましい状況になるだろうと警鐘した。2回目はRPAブームが盛り上がった2018年2月に「RPAブームからシステムデザインの欠陥を考察する」と題して、個別に作られるサイロ型のシステム間を繋ぐようなRPAの使い方は、企業情報システムの統合デザインができていないことに原因があり、デザインの欠陥ではないかという指摘である。

 その後も日本のRPAブームは沈静化するどころか拡大の一途をたどり、すでに3社に1社以上が導入している様子である。こういう現象は日本独特のようで、後発のRPAベンダーも続々上陸している。その背景を考察してみると、やはり企業の情報システムがサイロ状態でデータ連携の仕組みが弱く、人の作業でシステム間をつないでいることが最大の要因だろう。

 Excelを多用する業務スタイルはどこでも見かける。そのほかにも細かいことにこだわったビジネスプロセスが多い、たいして付加価値のない単純作業が多い、プロセスのムリ・ムダ・ムラが多いなど、処理プロセスの問題がある。そんな中、ルーティン作業に関わる人件費を削減したい、働き方改革のために労働時間の削減が求められるといった事情が相まって、RPAブームになったわけだ。

 しかし最近になって、うまく行かないとか期待外れだという声が増えてきた。最初に指摘したように、まずプロセスを可視化してRPAが適合する業務に適用しなかった結果だろう。それでようやく気づいたのか、それともRPAベンダーがアドバイスしたのかは分からないが、プロセス可視化の声が少しずつ聞こえてくるようになった。しかしプロセス可視化と言っても決して容易なことではなく、容易ならとうにやっていたはずだ。プロセス可視化にも留意しなければいけないことがいろいろある。

いろいろあるプロセス可視化手法、何を使えばよいのか

 可視化手法の前に、だれがプロセス可視化を担うかという基本的な考えが必要である。トップダウンで流れを作ることは重要だが、最重要なのは「現場の人」がやること。これが本質だ。なぜなら現場は個々のプロセスを熟知しているから可視化作業の効率は圧倒的に正確で速い。システム部門などが現場をヒアリングしてプロセス可視化を進めても、業務理解がないと適切な描き出しはできないし、効率は圧倒的に劣る。

 一般に現場の人たちにとって、可視化作業はやりたくない作業だ。日常の業務に加えて負荷がかかるからである。可視化を好まない人たちも少なからずいる。ブラックボックスにしておいたほうが現場の仕事はやりやすい。よくある自己防御の現れである。だから推進するチームも必要になる。こういう背景があることを考えて、企業風土に合った手法を選ばねばならない。

 現場の人たちがプロセスを描き出すためには、いくつか必要な要素がある。まず、表記が分かりやすいことだ。どんな手法にもある表記のルールがシンプルで親しみやすく、容易に習得できることは重要な条件である。同時に、会社組織にとっての共通言語化できるものでなければならない。したがって、手法としての体系がしっかりしているものを選ぶべきだ。

 国内の手法でも優れたものはいろいろある。「GUTSY-4」はBA(Business Analysis)を具体的な手法にしてビジネスモデルからプロセスモデル、IT要求モデル、ITモデルをモデリングして整合させていく可視化手法である。「匠Method」はシステムエンジニアが開発したビジネスモデル方法論で“価値”をキーにして分析的に総合していく理解しやすい手法である。「HIT.s法」というトヨタ方式を参考にして開発されたホワイトカラーの業務プロセス可視化手法もある。現場主体で描きやすいツールを提供している。

 海外では、特に米国では1990年代からSCOR(Supply Chain Operations Reference)やDCOR(Design Chain Operations Reference)といったプロセス参照モデルという可視化活動に取り組んできた歴史もあり、日本よりはるかにモデルや可視化のマインドが高い。BPM(Business Process Management)もそのような背景や文化からほぼ同じ時代に生まれてきた概念である。もちろん最近、日本で使えるようになったプロセスマイニングを適用するのもよいだろう。

●Next:ツール頼りでは本質的なプロセス改善にたどり着けない

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