[木内里美の是正勧告]

思い知らされた社会システムの不出来、旧弊打破なくしてこの国の将来はない

コロナ禍の教訓、あなたはどう生かす?[前編]

2020年4月22日(水)木内 里美

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的な感染拡大が、時々刻々と深刻度を増している。日本国内も現時点では終息に向かう出口すら見えない状況だが、そんな中で考えるのは、この非常事態・難局をどう捉えて、どう将来に生かしたらよいかということだ。考察が少し長くなってしまったので前・後編の2回にわたってお届けする。

 まずは冷静に、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の、国内での感染拡大の流れを振り返ってみよう。中国の武漢で新たな感染症の情報が出てきたのは2019年の年末だった。1月20日に横浜港を出港したクルーズ船「ダイヤモンドプリンセス号」の乗客の1人が体調不良を訴えて1月25日に香港で下船。この乗客が新型コロナウイルスに感染していたことが2月1日に確認された。2月3日に横浜港に帰港した同船は同月19日まで下船が許可されず、船内で次々と感染が拡大。全員が下船した3月1日までに700人を超える感染者を出してしまった。

 クルーズ船の動向に耳目を奪われている間に、海外渡航者や帰国者などから国内での感染が進み、2月1日時点で20人だったのが、1カ月後の3月1日には258人になっていた。WHO(世界保健機関)が新型コロナウイルス感染症をパンデミックと認定したのが3月11日。その後も国内の累積感染者は増加し、政府より緊急事態宣言が発出される4月7日にはクルーズ船を除いて4400人を超えた。そして、4月18日には1万人を超え、当初の想定を上回る感染力を示したのである。倍加日数(感染者数が倍になるのに要する日数)がどんどん短くなり、感染拡大が尋常ではなくなった(画面1)。

画面1:厚生労働省などの公表データを元に最新の感染状況をグラフにして伝えているYahoo! JAPANの「新型コロナウイルス感染症まとめ」ページ(https://hazard.yahoo.co.jp/article/20200207
拡大画像表示

 3月上旬までは、インフルエンザ程度だろうとタカを括っていた米国では、4月21日現在で感染者数が78万8000人に達し、感染爆発を目の当たりにしてパンデミックという広域疫病の恐ろしさを世界に知らしめた。米国のこの感染者数は世界の総感染者数の3分の1を占め、一国の感染者数としてイタリアを抜いて世界最多となっている。

国際レベルで見た日本の「反応感度」は……

 国としての「反応感度」はどうだったか。何か基準があるわけではないから、ファクトに基づいたベンチマーキングがよさそうだ。このコロナ禍の中で、感染者ゼロの日が4月14日、16日と2日ある台湾が現時点でベストプラクティスと評価されている。台湾は中国がWHOに武漢市で正体不明の感染症が出ていると報告した昨年12月31日に、直ちに手を打ち出した。まず武漢からの渡航者の検疫を徹底して水際対策を始めた。隔離措置では違反者に高額の罰金を科す一方で、自宅までの送迎を手配し、待機を守った場合の手当も支給した。

 市民への感染対策も徹底していた。台湾政府は国内でマスク着用を義務化し、1月下旬にはマスク生産強化のための緊急予算をつけ、工場の人員補強で軍人を配備するなどしてわずかな日数で生産数を8倍に増やした。その後、マスクの在庫データがわかるアプリを公開し、市民は安心して買い占めなどしないで済む環境も整えた。さらに2月になると、すべてのマスクを政府が買い上げ、不正や不平等が起こらないよう配布記録制で市民の手に渡るようにした。スーパーでは入口で検温と手の消毒を徹底して行っており、群がることなく必要なものを買うことができている。

 こうして台湾の一連の行動プロセスを見ると、日本の対応を列挙して比較するまでもなく、明らかに反応感度が異なることがわかる。その違いの理由の1つに過去の教訓がある。台湾では2003年のSARS(重症急性呼吸器症候群)により、国内で74名の感染死亡者を出したことで、翌年に感染症防止法を強化して将来のパンデミックに備えていたのだ。

 もう1つは、専門的で柔軟な閣僚人材が鋭い洞察力を発揮して初動で対策を打ったことだろう(画面2)。陳建仁(チェン・ジェンレン)副総統は、公衆衛生の博士号を持つ専門家としてSARSの対応経験を踏まえて感染防止策を主導している。また、プログラマー/実業家から閣僚に転じた若きIT担当大臣、唐鳳(オードリー・タン)は、アプリの開発やデータ管理で力を発揮している。このようなすぐれた人材を存分に生かしてリーダーシップを発揮しているのが蔡文英(ツァイ・インウェン)総統である。

画面2:#TaiwanCanHelpサイト(https://taiwancanhelp.us/)に記されたウイルス感染防止指針。台湾は自国での経験を積極的に公開して世界の感染拡大を食い止めようとしている
拡大画像表示

●Next:日本の「反応感度」と有事で鮮明になった「決定的に欠けていること」

この記事の続きをお読みいただくには、
会員登録(無料)が必要です
バックナンバー
木内里美の是正勧告一覧へ
関連キーワード

BCP / パンデミック / 電子政府 / 自治体 / ペーパーレス / 新型コロナウイルス / テレワーク

関連記事

Special

-PR-

思い知らされた社会システムの不出来、旧弊打破なくしてこの国の将来はない新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的な感染拡大が、時々刻々と深刻度を増している。日本国内も現時点では終息に向かう出口すら見えない状況だが、そんな中で考えるのは、この非常事態・難局をどう捉えて、どう将来に生かしたらよいかということだ。考察が少し長くなってしまったので前・後編の2回にわたってお届けする。

PAGE TOP