今回のコロナ禍が明らかにしたこと、と言うより隠れていた現実を赤裸々にしたことがたくさんある。その中でもリアルな活動が持つ価値の大きさや、それを支える日本のデジタルの残念な実態が明らかになったことは、コロナ後の社会に多くの知恵をもたらすだろう。今度こそデジタル社会を目指さなくてはならない。
2020年3月11日の世界保健機関(WHO)によるパンデミック宣言を経て、4月7日に政府が緊急事態宣言を発出すると、外出自粛や休業の要請が全国に浸透し、接触8割減を目標に人々の行動は停滞していった。デパートやさまざまなレジャー施設、映画館などが臨時休業し、多くの飲食業は休業するか時間短縮するかを迫られた。外出と移動の自粛が求められ、感染リスクがあって客が来ないから、営業停止を余儀なくされた店舗も多い。
新幹線も航空便も乗客は激減した。宿泊業や観光業はキャンセルが続いて成り立たなくなり、アパレルも消費が落ち込んで大きな打撃を受けている。中でもインバウンド期待のビジネスは渡航禁止の影響で、売上げがほぼゼロになった。1月~3月期のGDPは年率で3.4%も減少し、次の四半期(4月~6月)は20%を超えた落ち込みになると予想される。経済が急激に落ち込み、容易には回復しない環境下で廃業や倒産が続くだろう。尋常ではない経済危機が世界規模で進んでいる。
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不自由な生活体験によって明確になったリアルの価値
コロナ禍の影響を最も受けているのはサービス業だが、製造業も製品の売れ行きが大幅に減少している。その連鎖で、中小企業への打撃も大きい。パンデミックのような危機に比較的強いと思われる農業や水産業などの1次産業も、大口需要や外食産業の低迷で同様の打撃を受けている。行き場のない高級食材は叩き売り状態であり、花卉業界は出荷が急激に落ちて廃棄処分に追い込まれている。
一方で、オンラインショッピングやネットで発注する食物のデリバリーサービスが活況を呈している。人との接触を避けつつ必要なものを入手できるからだが、しかしこの裏側では代行も含めてリアルに動く人が配送サービスを受け持っている。
このことからも明らかなように、経済は人々の活動によって生まれ、人のリアルな活動があってこそ成り立っている。リアルの価値をこれほど鮮明にしたのはコロナ禍における不自由な生活体験あってこそ。コロナ後には新たなリアルの価値を求めるようになるに違いない。そしてデジタルの価値の見直しも始まることだろう。
●Next:デジタルワークを実践できている企業の例、一方でこの国の電子行政は?
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