日本企業の約95%は、DXにまったく取り組んでいないレベルにあるか、DXの散発的な実施に留まっている――「DX推進指標 自己診断結果 分析レポート」で明らかになった実態である。この状況に危機感を抱いた経済産業省は2020年12月、「DXレポート2(中間とりまとめ)」を公開した。商務情報局情報技術利用促進課課長の田辺雄史氏は「このままでは日本企業は国際競争に敗れる。遅れている企業は早急にDXに取り組むべき」と述べている。
495社分の自己評価を収集・分析
「DX推進指標 自己診断結果 分析レポート」は、企業が自社のDXの推進に向けた取り組み状況を把握するために経済産業省が2019年7月に公開した「DX推進指標」の自己評価495社分を情報処理推進機構(IPA)が収集・分析したもの。この指標は、企業のマインドセットや企業文化、推進体制、人材育成、ITシステムの状況などDX推進のための枠組みについての35の定性指標と、取り組み状況についての32の定量指標で構成され、それぞれの設問に対して成熟度をレベル0~5で回答する形式をとる。
レベル5は「グローバル市場におけるデジタル企業」、4は「全社戦略に基づく持続的実施」、3は「全社戦略に基づく部⾨横断的推進」、2は「⼀部での戦略的実施」、1は「⼀部での散発的実施」、0は「未着手」である(表1)。指標策定にあたって、経産省は「回答企業の成熟度の平均値が3に近づくよう設定した」(田辺氏)。なるほど、確かにこういった診断を自ら実施する企業ならおそらく1や0は少なく、加えてDXが喧伝されて数年経つので3付近が多めと想定するのは妥当だろう。
表1:DX推進指標の定性指標における成熟度レベルと特性(出典:経済産業省「DX推進指標(サマリー)」)拡大画像表示
結果はどうだったか? 実のところ回答企業の平均値は1.45と、想定を大きく下回った。具体的には、レベル5が1%、レベル4が4%、レベル3が14%、レベル2が26%、レベル1が31%、レベル0が24%。レベル1と0を合計すると55%と過半数を超え、レベル3(部門横断的ではあるが、持続的ではない)以下の企業が約95%を占めた(図1)。
図1:DX推進指標の分析結果(出典:経済産業省「DXレポート2 中間とりまとめ」)拡大画像表示
もちろん日本企業(人)に多い控えめに回答する傾向がレベルを下振れさせた可能性はあるが、一方で「あまりに結果が悪かったため提出するのを躊躇した企業もあったと思われる」(田辺氏)ことを考え合わせると実際の取り組み状況は、さらに残念な状況に留まっている可能性がある。
加えて問題なのは、経産省としてこれまで様々な施策を打ってきてなお、この結果であることだ。大手企業の経営層に気づきを促すため、東京証券取引所と組んで2015年、経営革新や収益水準・生産性の向上をもたらすIT活用に取り組んでいる企業を選定する「攻めのIT経営銘柄」をスタート。2020年にはDX銘柄に名称変更したが毎年、実施している。加えて2018年、「ITシステム『2025年の崖』の克服とDXの本格的な展開」と題したDXレポート1.0を発行し、既存システムの刷新とDXへの取り組み本格化を呼びかけた。
それに留まらず、DXの進め方をまとめた「DX推進ガイドライン」、上記調査の元になった「DX推進指標」と自己診断の仕組み、それに続くDX認定制度、さらにDXにおける経営層の行動指針となる「デジタルガバナンスコード」までも策定・公開している(表2)。筆者などは正直、「過剰サービスでは」と思うし、現実にそういう声もあるが、それはともかくとして、改善はしても改革やトランスフォーメーションをしようとしない企業の行動を変えようと努力してきたのだ。
表2:DXレポート以降の経済産業省のデジタル化推進に向けた取り組み拡大画像表示
にもかかわらずこの結果…。とは言っても各種の施策に関しては宣伝や告知がまだまだ足りない面があるし、DXレポート1.0も「2025の崖」というキーメッセージが「レガシーシステム刷新が優先」と捉えられ、予算や人材の面でDXへの取り組みにむしろブレーキをかける作用をした面も否定できない。
DX推進に向けた具体的施策を示す
では次にどんな手を打つか? 経産省は新たなDXレポート2021年春に公開することを決定し、広く意見を集めて反映させるために「DXレポート2(中間とりまとめ)」を2020年12月に先行して公開した。DXレポート1.0の反省から、DXレポート2ではDXに向けた具体的な取り組みに焦点を合わせている。詳細は中間とりまとめ案を参照いただきたいが、ここではDX加速シナリオとして挙げられている企業の経営・戦略の方向性(表3)やいくつかの疑問点を見てみよう。
表3:DX推進に向けた企業の経営・戦略の方向性(出典:経済産業省「DXレポート2 中間とりまとめ」を元に編集部で作成)拡大画像表示
まず企業の経営・戦略の方向性の中では、コロナ禍での事業継続を可能とする、緊急措置としての取り組みを「直ちに取り組むべきアクション(超短期)」、推進体制の強化、戦略策定といった企業内での取り組みを「短期的対応」、ITベンダーや同業者など外部企業との取り組みや人材確保を「中長期的対応」として、企業が行うべき取り組みを示している。
DX推進を成功させるために特に重要と思われるのが、「直ちに取り組むべきアクション」の中で挙げられているDXの認知・理解。DXレポート2では、あっさりと書かれているが、経営層が「DXとは何か」「なぜ取り組む必要があるのか」を理解し、DXの推進をリードすべきと指摘している。なおDXとは何かについては、本誌記事「Digital Transformationの意味を曖昧にとらえてはいけない、その理由」を再読いただきたい。
●Next:「短期的対応」「中長期的対応」で注意すべき点とは?
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