2021年2月25日、ライブ配信ウェビナー「『ローコードプラットフォーム』の実力と最適解を探る」(主催:インプレス IT Leaders)が開催された。注目セッションの1つとして、セールスフォース・ドットコムの岩永 宙氏(マーケティング本部 プロダクトマーケティングマネージャー)が登壇。「顧客接点としてのローコード」と題して語った内容を紹介する。
「顧客エクスペリエンス」を解決する2つの要素
あらゆる領域でデジタル化が進行している。岩永氏はまず「2020年はデジタル化が一気に加速した1年となりました。買い物のほとんどがデジタルチャネルに移行し、働き方の面でも、オフィスでの業務からWebミーティングを使ったリモートでの共同作業へと大きく変化したことは皆さんご存知の通りです。デジタル技術の活用は2021年以降も必須という状況です」と強調。デジタル化の流れは一時的なトレンドではなく、将来にわたって続くものであるとの認識を示した。
すべての企業においてデジタル対応が求められているものの、課題が多いのも現実だ。岩永氏は企業が直面しているデジタル化の課題は大きく3つあると指摘した。
1つめは、企業がバラバラなシステムを使うことにより「データのサイロ化」が起こり、顧客に信頼のあるデータを提供できなくなっていること。2つめは、昔から使い続けている「レガシーシステム」により、顧客が求める斬新で有用な機能が提供できていないこと。3つめは、「一貫性のないエクスペリエンス」しか提供できないことにより、企業と顧客がきちんとつながることができず、デジタル化による橋渡しができていないことだ。
「特にエクスペリエンスについては、一度解決すればいいというわけではなく、企業にとって継続的な課題となってきます。この課題を解決するためには、急激な変化に迅速に繰り返して対応していくことが必要で、そのためには、『誰でも優れたアプリを構築できる』こと、『変化に柔軟に適応できる設計ができる』ことが必要になってきます。この2つの要素を兼ね備えているのがローコードと呼ばれる技術です」と岩永氏は解説する。
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実際、ローコード開発には、多くのITリーダーが2020年の最優先事項として取り組んできた。ある意識調査によると、ITリーダーの92%は「2020年中に組織でのローコードの使用をさらに増やす」ことを計画していたという。また全体の78%が「パンデミックが原因でローコード開発の優先度が変化した」と回答した。
また、ローコード開発を導入するメリットについては「開発が簡単になる」「導入スピードが速まる」「専門外の関連チームがイテレーションプロセスにアクセスできる」「内部でのコラボレーションが改善される」が多数を占めるなど、期待が高まっていることを物語っている。
早期からローコード開発環境「Force.com」を提供
では、セールスフォース・ドットコムはローコードの領域でどのような取り組みをしているのか。それを解説するために、岩永氏はセールスフォース・ドットコムの成り立ちや企業ビジョンを説明した。2020年度売上高が171億ドルに達するなど、CRMアプリケーションの市場シェアで世界No.1のベンダーとして広く知られる同社は、1999年の創業以来、ビジネスと社会貢献を両立させてきた企業である。
これまでに第三者評価機関や調査機関、メディアなどから「社会貢献に取り組む企業TOP50」「世界で最も持続可能な企業」「世界で最も尊敬される企業」「世界で最も働きがいのある会社」「世界を変える企業」といった評価を獲得してきたことが証左といえるだろう。
「創業以来、『より多くの企業がより多くの顧客に簡単につながるために』という価値の提供に力を入れてきました。その理念を追求するために、新機能や新サービスを提供し、企業や技術を獲得してソリューションとして提供してきました。ローコードの取り組みについても、創業から間もない段階でローコード開発環境『Force.com』(現Lightning Platform)の提供を開始しています」(岩永氏)。
Force.comは、2007年のイベント「Dreamforce」でアナウンスされ、これにより、創業以来提供してきた営業支援サービス(現Sales Cloud)はさらに大きな柔軟性を獲得した。
「Force.comにより、営業支援系の業務の拡張にとどまらず、その前後にある小さな作業や業務に至まで、お客様自身が簡単に開発してセールスフォースのアプリケーションの活用範囲を広げることができるようになりました。現在、当社は『Salesforce Customer 360』という形で、全方位の顧客接点のソリューションを展開しています。それを支えるプラットフォームとして、ローコードのDNAが今でも引き継がれているのです」と岩永氏。
CRMの枠を超えた一貫した顧客エクスペリエンス
ローコードの概念がSalesforce Customer 360に組み込まることで、顧客接点業務を各サービスでつなげる際に発生する「隙間業務」を埋めることもできるようになった。「その結果として、一貫した顧客エクスペリエンスを提供できることが、セールスフォース・ドットコムの大きな差別化ポイントになりました。我々はCRMの会社として認識されることが多いのですが、そこにローコードの機能を付け加えることで、単にCRMを提供するのではなく、その枠を超えて、さまざまな業務で利用できるようになったのです」と岩永氏は視聴者に訴えた。
例えば、あるバイクメーカーでは、オートバイにかかわるさまざまなデータを自分たちで作成し、ディーラー管理やカスタマーポータル、ロードサイドサービス、メンテナンスといった新しいアプリケーションを自分たちで作成し、顧客データと連携させて他社以上のアドバンテージを獲得しているという。
強力な機能を誰もが簡単に組み込めることの意義
岩永氏は、セールスフォース・ドットコムのローコード開発の特徴として、まず、誰もがエクスペリエンスを改善できることを挙げる。
「サプライチェーンにおける品質管理やライセンス管理・プロジェクト管理はもちろん、配送や検品・手配といったオペレーション、マーケティング、人事、財務、法務といったさまざまな部門が自らアプリケーションを開発することができます。それにより、セールスとサービスの質を高めることができるのです」(岩永氏)。
また、強力なサービスがアプリケーションに組み込み済みの状態で利用できることも特徴だ。人工知能、ワークフローエンジン、検索、モバイルアクセス、セキュリティとアクセス制御、コラボレーション、他言語・マルチ通貨対応、API、アイデンティティ管理、レポートとダッシュボードなど、ゼロから開発すれば多大な工数のかかる機能をすぐに利用することができる。
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「スプレッドシートをアプリに変換するローコードツール『Object Creator』や、誰でも使えるAI対応アプリを構築するための機能『Einstein予測ビルダー』『Einstein Next Best Action』などがあります。マーケットプレイス『AppExchange』からもさまざまな機能をインストールして利用することができます」と、岩永氏は機能の充実に加えて、使い勝手の良さもアピールした。
セールスフォース自身もさまざまなシーンでローコードを活用している。岩永氏は、製品のデモや顧客事例を紹介し、最後に次のように述べ講演を締めくくった。「すべての企業はお客様を中心に回るべきです。しかし、テクノロジーがバラバラで、各部門が把握している顧客情報が断片的なら、顧客中心になりようがありません。Salesforce Customer 360なら、ローコードを備えており、一貫したエクスペリエンスの提供が可能です。ワールドワイドの先駆的事例にも照らしながら個別のニーズに応える準備ができていますので、ぜひ、我々にお声がけください」。
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