「CIO賢人倶楽部」は、企業における情報システム/IT部門の役割となすべき課題解決に向けて、CIO(Chief Information Officer:最高情報責任者)同士の意見交換や知見共有を促し支援するユーザーコミュニティである。IT Leadersはその趣旨に賛同し、オブザーバーとして参加している。本連載では、同倶楽部で発信しているメンバーのリレーコラムを転載してお届けしている。今回は、CIO賢人倶楽部 会長 木内里美氏によるオピニオンである。
世界中が新型コロナウイルスのパンデミックに襲われて、すでに20カ月が経過する。その間にさまざまなワクチンが開発されたが、ワクチンによる抗体が予想以上に短期間に劣化することが分かってきた。ワクチン接種をしても、変異種に感染するブレークスルー感染がかなりの率で起こることも判明している。
結局、ワクチンだけでコロナ渦の終息は期待できない。感染症研究者の中には、「これから2年から5年ほど続くのではないか」という見解もある。ワクチン接種を先行したイスラエルや英国、米国の感染再燃をみると、そう思わざるをえないものがある。当初1年くらいは覚悟したものの、これほど長期になるとだれが予測できただろうか?
ワクチン接種は進むものの、終息が見えないコロナ禍“ウィズコロナ”“アフターコロナ”を、感染予防の要否で区分するとかワクチンの接種状況が進んだかどうかで区分していたが、実態としてはウィズコロナがかなり長期になるという見通しになってきた。2020年の今頃は、アセットマネジメント会社など経済の専門家は2021年のどこかで経済回復するだろうと予測していた。少なくとも日本はそのような状況にはなっていない。むしろ国費を大きく消費し、国の経済体力を大いに消耗させた。
アフターコロナは遠い先になりそうで、いまそのことを考えるより、長期化するウィズコロナでやれることを最大化する方が賢明だ。だが経済体力の回復はマネーゲームでどうこうできるわけがなく、民間企業の持続可能な活動で生産性を高めるしかない。その1つの要素がデジタルトランスフォーメーション(DX)だが、よくあるデジタル技術を活用する程度ではなく、企業体質を変えないとDXも容易ではない。変えるべき企業体質は、変化適応能力である。
戦略的な経営の概念に、「ダイナミックケイパビリティ(Dynamic Capabilities)」がある。最近、急に出てきたわけではなく、20年以上前に最初の定義が示された。理論形成のためにいろいろな学者が研究を重ねているが、ビジネス社会では難しく考えることはない。割り切って表現すれば、洞察力を効かして変化を先読みし、俊敏に変化対応していく組織能力のことだ(表1)。
表1:オーディナリー・ケイパビリティとダイナミック・ケイパビリティの相違点(出典:経済産業省『ものづくり白書2020』/原典:D・J・ティース著『ダイナミック・ケイパビリティの企業理論』、中央経済社)拡大画像表示
ビジネス社会では常に言われ、意識されている概念でもある。DXが進まない会社はそもそもダイナミックケイパビリティがないと言っていい。変化に対するセンサーもなければ、リスクに挑戦する意思も、さらには価値を創出する力もスピードもない。基礎能力がないのに、身の丈以上のことを望むのは無理がある。
コロナ禍は世界を襲った未曾有の社会変化だ。この変化の真っただ中にいる今こそ、基礎能力を高める良い機会だ。変化がダイナミックなのだから、対応する力もダイナミックでなければならない。IT/デジタルの世界で言えば、アジャイルやDevOpsの能力である。ぜひダイナミックケイパビリティを高める施策を検討し、実行してもらいたい。

CIO賢人倶楽部
会長
木内里美氏
※CIO賢人倶楽部が2021年9月1日に掲載した内容を転載しています。
●筆者プロフィール
CIO賢人倶楽部(CIOけんじんくらぶ)
http://cio-kenjin.club/
大手企業のCIOが多数参加するコミュニティ。企業におけるIT部門の役割やIT投資の考え方、CEOをはじめとするステークホルダーとのコミュニケーションのあり方、デジタルトランスフォーメーションに向けたこれからの情報システム戦略、IT人材の育成、ベンダーリレーション等々、さまざまな課題について本音ベースでディスカッションしている。
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経営変革 / デジタルトランスフォーメーション / 組織改革 / 働き方改革 / アジャイル / DevOps / ダイナミックケイパビリティ / CIO
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