コロナ禍が我々の生活やビジネス、経済を一変させてからもうじき2年になる。急速に浸透したテレワークが定着して、業務にあたる時間やコストの効率は確かに上がったが、さまざまな問題も生まれている。その1つに、ニューノーマルの時代を迎えて顕在化する「働かないおじさん問題」がある。その解決方法を、社会情勢を踏まえて考察してみる。
リモートワークで通用しなくなった従来の人材管理手法
新型コロナウイルスの蔓延によってさまざまな規制が長期化する中で、それを前提とした社会活動が定着し、いわゆるニューノーマル(新常態)になった。急速に浸透した在宅勤務やリモートワークは、当初こそ不慣れによるトラブルもあったが、今では定着して継続する会社が増えている。通勤手当や移動時間が省け、固定費として重い事務所の賃貸料も契約面積を減らしたりして、コスト削減を図れるからだ。
コロナ禍以前は、オフィス勤務を前提にフリーアドレスや洒落た内装、照明、斬新なレイアウトなどでワークスタイルに変革を求めていたが、その価値観も一変した。イケア(IKEA)など家具メーカー各社は、新しいワークスタイル、ワークプレイスを提案するビジネスやサービスを立ち上げている(写真1)。会社のオフィスは突き詰めればコミュニケーションのための場。それなら気軽に話せる談話の場をあちこちに配置するほうがよく、皆が長時間執務するための机や椅子は不要というコンセプトを推進している。
しかしながら、この流れは新たな問題を提起することになった。新入社員の育成や働けない管理職の存在だ。前者は別の機会に譲ることにして、ここでは後者について考えたい。まず、メンバーシップ型雇用制度の運用上の弊害かもしれないが、管理職が役割ではなくステータスになってしまう勘違いがある。職位によって椅子が豪華になるのはその象徴的だろう。
電話や対面による指示中心にやっていた管理手法がテレワーク、リモートワークで通用しにくくなり、それに馴染めない管理職が対面を求めて出社させたがる傾向もある。お盆の時期をピークに急速に感染者数が減少した日本では、明らかに通勤時間帯の交通機関混雑が目立つし、朝のターミナル駅では大量のサラリーマン風の人たちが溢れ出てくる。確かにコミュニケーションには課題があるリモートワークだけに、出社制限の条件がなくなれば元の姿に戻ったり、対面を求めて出社させたりする会社が多いのだろう。
管理職の仕事の1つに社員の人事評価があるが、総労働時間に目が向いていたことは否めない。これは残業を増やす要因でもある。人事評価は働いた時間ではなく、生産性と成果とコミュニケーション(プロセス)で計測すべきことを、ニューノーマルでの働き方から学んでほしいものだ。
「働かないおじさん」が「働かない高齢再雇用者」に
さて、表題の「働かないおじさん問題」である。管理職とイコールではないが、働かないおじさんはコロナ以前から存在した。口は立つし批判や言い訳もうまいが、仕事には熱心でないベテラン社員たちである。日本型の雇用制度の中で生き延び、会社もある種の必要経費と考えて黙認しているところがある。とはいえ、働いてもらわないことには日本企業の生産性はさらに劣化してしまう。
日本全体の労働生産性はバブル経済時代に少し改善されたものの、それはあくまでもバブルでしかなかった。その後は先進7カ国の中で最低のまま30年もの時間が経過し、近年はさらに急激に悪化している。労働生産性はアウトプットに対する労働時間で決まるから、だらだらとアウトプットのない長時間労働をしていたら生産性は下がるばかりだ(図1)。
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日本の労働生産性の低さは長時間労働に由来すると言われる。密度の高い仕事をして残業などせず定時に退社するようになれば生産性は上がるし、内容のない会議を減らせば生産性が上がる。業務プロセスにデジタルを活用して効率を上げれば生産性は上がる。しかし、働かないおじさんは残業などしないで定時で退社する。アウトプットがないから生産性向上に寄与しないし、やがて働かない高齢再雇用者になっていく。
●Next:「働かない高齢再雇用者」問題の解決コストは企業が負担?
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