旭化成は、デジタルツインによる工場設備保全など、データを活用した事業変革に取り組んでいる。2022年3月10日、日本データマネジメント・コンソーシアム(JDMC)主催の「データマネジメント2022」のセッションに同社 デジタル共創本部 スマートファクトリー推進センター センター長の原田典明氏が登壇。デジタルツイン事例を中心にした一連の取り組みを説明した。
旭化成は、マテリアル(材料)、住宅、ヘルスケア(製薬関係)の3つの領域で事業を展開している。グループ全体で、GDP(Green:CO2排出量の削減、Digital:デジタル技術を活用して研究開発や生産技術を高度化・効率化、People:従業員の自律的成長)に取り組んでいる。
組織面では、2021年4月に「デジタル共創本部」を発足している。また、全社員のリテラシー向上のため、「DXオープンバッジ」と呼ぶ認定資格制度を制定。eラーニングコンテンツで自己啓発を図るための制度だ。同社 デジタル共創本部 スマートファクトリー推進センター センター長の原田典明氏は、「2023年にはグループの全従業員4万人をデジタル人材にしたい」と意気込む(写真1)。
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データマネジメント基盤は、Microsoft Azure上に構築している。データソースからデータを集約し、分析に使えるようにするデータハブの役割をはたす。データ連携の仕組み、ETL機能、データプレパレーション機能、データカタログなどの要素を構築している。
現場のデータを分析して生産技術を改革
デジタルトランスフォーメション(DX)の推進分野の1つが、生産技術改革である。製品外観検査の自動化、生産性・生産品質の向上、装置の故障を予兆検知、作業の効率化の4項目を主要課題として、IoT化に取り組んでいる(図1)。
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設備を無線で遠隔診断する事例では、回転機器に加速度センサーを付けてデータをセンシングしてクラウドに送信し、異常を診断している。特徴はセンサーなどの装置がすべて電池で駆動すること。工場への配線工事は大変なので、電池駆動によって導入を容易にしている。
スマートグラスを使ったリモート協働作業の事例もある。作業員以外は現場に入れない状況においてもリモートから点検を行えるようにする。現場の作業員にスマートグラスを装着してもらい、専門家がリモートから診断したり、アドバイスしたりする。
データ分析人材の育成では、一般ユーザー、パワーユーザー、データサイエンティストの3段階でカリキュラムを組んでいる。「パワーユーザーは、半年間のカリキュラムで育成する。座学とOJTの両面でスキルを身に付けてもらっている」(原田氏)という。
生産技術革新の事例の1つとして、センサーデータの活用によって繊維製品の品質を向上させた例がある。冬季は品質が悪くなるという課題があったが、分析したところ、湿度が収率に影響することが分かった。現場に加湿器を設置すると収率が上がり、加湿器を止めると収率が下がることも突き止めた。
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