「CIO賢人倶楽部」は、企業における情報システム/IT部門の役割となすべき課題解決に向けて、CIO(Chief Information Officer:最高情報責任者)同士の意見交換や知見共有を促し支援するユーザーコミュニティである。IT Leadersはその趣旨に賛同し、オブザーバーとして参加している。本連載では、同倶楽部で発信しているメンバーのリレーコラムを転載してお届けしている。今回は、キッコーマン システム戦略部長 小笹淳二氏によるオピニオンである。
富士通が、メインフレームとUNIXサーバーの製造・販売を2030年に終了することを公表した(富士通の関連ページ、図1)。2035年まで保守は続くのでまだ先の話だが、時代の1つの節目だと感じた人は多いのではないか。私自身、前職の化学・住宅メーカーで、20年ほど前に複数台の富士通機で構成された販売管理システムをオープンシステムに移行するため、Javaを使って再構築した経験がある。その流れの1つの終着点だと感じている。
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私が社会人になった1980年代後半はどうだったかと振り返ると、業務や地域ごとに費用を考慮しつつ、複数メーカーの異なるメインフレームを導入。必要に応じて専用線網で接続し、その上で会計や販売管理などの基幹業務システムを内製して構築・運用していた。当時、基幹系のITインフラはこれらメインフレームと米IBMが提唱したSNA(Systems Network Architecture)ネットワークが基本であり、情報システム部門の主業務の1つはITインフラを構築・運用・保守することだった。
一方、技術部門や製造部門ではより新しい技術を使っており、サーバーはUNIX機、ネットワークはTCP/IPベースのJUNETでWANとLANを構築。主に技術部門が運用・保守していた。例えば住宅関連の製造部門では、当時のAI技術であるエキスパートシステムを、プレハブ住宅の間取り図から必要部材を抽出するシステムや工場における工程計画を作成するシステムに組み込んでいた。オフィス業務をサポートするWindowsサーバーも多数あった。こういったシステムは基幹系に対し、技術系や情報系などと呼ばれていた。
しかし、2000年以降、オープン化の流れが加速し、基幹系と情報系という分類があいまいになり、徐々にUNIXを源流とするLinuxが主流となり、独自のOSやCPUを使ったメインフレームはもちろん、メーカー個別のCPUで稼働するUNIXサーバーもフェードアウトしていく傾向が顕著になる。1980年代に始まったこの流れが半世紀近くを経て浸透したことを象徴するのが、富士通メインフレームのEOS(End of Service)だろう。
ここで私が「留意しなければ」と思っていることがある。システムは世代交代しても、企業内のIT文化はそうはいかず、過去からのメインフレームやUNIXの流れが残っていることだ。それゆえ、新しい取組みとして議論されることが多いデジタルトランスフォーメーション(DX)だが、歴史のある企業においては過去の情報系と基幹系の体制を振り返り、自社の企業文化に合わせた対応案を考えることが、DXを一過性の取組みとしないために重要だと考えている。
●Next:DXの推進に必要な「T型人材」と「T型組織」
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