一般社団法人 日本データマネジメント・コンソーシアム(略称:JDMC)は2023年3月8日、「2023年データマネジメント賞」の受賞企業を発表した。大賞は日本製鉄が受賞した。同社は、製鉄所のIoTデータを一元化して全社で活用できるようにした。なお、データマネジメント賞は、データマネジメントにおいて他の模範となる活動を実践している企業・機関などの中から優秀なものに対して授与している表彰制度であり、今回で10回目を迎える。
日本データマネジメント・コンソーシアム(JDMC)は、データマネジメントにおいて他の模範となる活動を表彰する「2023年データマネジメント賞」の受賞企業を発表した。大賞は日本製鉄が受賞した。同社は、製鉄所のIoTデータを一元化して全社で活用できるようにした。今回は、大賞を含めて6社が各賞を受賞した(表1)。
賞名 | 受賞企業名 | 受賞理由 |
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大賞 | 日本製鉄 | IoT、データカタログ、AI、BIを駆使したデータドリブン経営への取り組み |
データガバナンス賞 | HILLTOP | 職人技を徹底してデータ化し、先進的な試作品メーカーに業態転換 |
モデリング賞 | PFUテクノワイズ | データモデルの利用・改善で多品種少量生産を可能に |
データ人材賞 | 旭化成 | オープンバッジ制度と専門人材教育によるデータ人材育成 |
アナリティクス賞 | イーデザイン損害保険 | データドリブン経営に向けたCoE(Center of Excellence)の設置・運営 |
アナリティクス賞 | MonotaRO | 高い売上高成長率を10 年以上維持するデータ活用の取り組み |
表彰式は、JDMCが同年3月9日に主催した「データマネジメント 2023」で行った(写真1)。受賞企業6社それぞれの取り組みの概要は以下のとおりである。
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データマネジメント大賞:日本製鉄
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製鉄所内に設置したIoTセンサーが収集したデータを一元管理する仕組みを構築した。並行して、複数製鉄所・部署の用語を共通言語化し、全社のデータを集約・カタログ化した。さらに、専門家以外でもデータを活用でき、AIによる画像解析も行えるようにした。シチズンデータサイエンティストを2025年までに1000人以上育成する計画。
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データガバナンス賞:HILLTOP
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工作機械の設定や加工手順のノウハウなどのように、これまで熟練職人任せだった部品加工技術をデータ化・標準化し、人がやるべきこと(知的労働)と、機械に出来ること(ルーティーンワーク)を徹底的に分業してシステム化した。これにより例えば、通常は800項目ほど必要な設定が25項目で済むようになった。
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モデリング賞:PFUテクノワイズ
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混合品種生産や多品種少量生産を可能にするためにデータモデルを活用している。日々の活動で得た改善の気付きをもとに、部品展開や作業手順書などをブラッシュアップしている。これにより、受注データをもとにしたユニットへの展開や製造部品表(EBOM)の作成、製造手順書・試験プログラムの作成などを自動化している。改善活動の延長線上にデータモデルの高度化・精緻化が組み込まれている。
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データ人材賞:旭化成
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データマネジメントを担う人材を重視し、全従業員4万人を対象としたデジタルリテラシー教育と、デジタルに精通した専門人材を2024年度末に2500人にする施策に取り組んでいる。前者ではバッジ制度を導入し、自発的な学習を促し、1万5000人以上がバッジを取得済み。後者では、マテリアルズ・インフォマティクスを使いこなせるMI人材の育成や、現場の課題解決にデータ分析を活用できるパワーユーザー(PU)の育成に取り組んでいる。2022年11月時点でMI人材は318人、PU教育は162人が修了済み。さらに、デジタル技術のコミュニティ活動も盛ん(関連記事:2023年には全従業員4万人をデジタル人材に─デジタルツインで生産技術改革に取り組む旭化成)。
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アナリティクス賞:イーデザイン損害保険
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オンライン自動車保険は、契約者の車両にセンサーを設置し、アプリとの連携で日々の運転をサポートしつつ、様々なデータを取得している。運転データをはじめとして、コールセンターに集まる顧客の声など社内外のデータを集約・分析し、顧客サービスなど経営に生かす。このための組織として2021年、CoE(Center of Excellence)部門を設置した。KPIの可視化、PDCA支援、各種分析・モデル構築、分析基盤の構築・運用を10人体制で遂行している。特徴は、外部専門家を招聘せず、CoEのスタッフ全員を社内の現場メンバーから構成していること。
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アナリティクス賞:MonotaRO
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ネットストアに注文があれば早期に配送する必要があるが、一方で物流センターに在庫できる商品点数には限りがあるため、物流の需要予測が重要になる。こうした活動を支えるのがGoogle Cloudを生かしたデータ基盤である。社内のほとんどのデータを蓄積しており、社員の半数以上が日常的に利用している。データ分析を活用することで、2010年以降20%近い売上高成長率を維持している(関連記事:モノタロウ、注文管理システムを強化、入荷予定の在庫情報を使った在庫引当を可能に)。
写真1:表彰式は、JDMCが2023年3月9日に開催した「データマネジメント 2023」で行った(出典:JDMC)