[架け橋 by CIO Lounge]

実践を通じた人材の育成がDX推進のカギ

ロート製薬 D2C事業部 兼顧客製品情報部 システム担当マネージャー 岸本 満氏

2023年12月8日(金)CIO Lounge

日本を代表する百戦錬磨のCIO/ITリーダー達が、一線を退いてもなお経営とITのあるべき姿に思いを馳せ、現役の経営陣や情報システム部門の悩み事を聞き、ディスカッションし、アドバイスを贈る──「CIO Lounge」はそんな腕利きの諸氏が集まるコミュニティである。本連載では、「企業の経営者とCIO/情報システム部門の架け橋」、そして「ユーザー企業とベンダー企業の架け橋」となる知見・助言をリレーコラム形式でお届けする。今回は、ロート製薬 D2C事業部 兼顧客製品情報部 システム担当マネージャーでCIO Lounge正会員メンバーの岸本 満氏からのメッセージである。

 デジタルトランスフォーメーション(DX)という言葉が一般的になり、あちこちで使われてもいます。にもかかわらず、Transformationという意味合いの改革が進まないのはなぜでしょう?

 情報処理推進機構(IPA)が発刊した「DX白書2023」によると、デジタイゼーション(Digitization)やデジタライゼーション(Digitalization)の成果の割合は日米で大差はありません。しかし、新規製品・サービスの創出やビジネスモデルの変革については歴然とした差があります(図1)。

図1:日米におけるDXの成果(出典:IPA「DX白書2023」)
拡大画像表示

 この差の背景には何があるのでしょうか? 仮説の1つが人材(人財)です。図2に日米それぞれのDXを推進する人材の過不足の状況を示しました。2022年、米国におけるDX人材は「やや過剰である」と「過不足はない」の合計、すなわち「充足」が73.4%。日本はたった10.9%しかありません。

 さらにいうと「大幅に不足している」との回答が、米国では2021年の20.9%から22年は3.3%へと減少したのに対し、日本は30.6%から49.6%と大幅に増えています。

図2:日米におけるDXを推進する人材の過不足の状況(出典:IPA「DX白書2023」)
拡大画像表示

 日本のDX人材不足の一番の原因は、IT人材が絶対的に不足しているからだと筆者は考えます。過去から現在に至るまで、日本企業はシステム開発を行う際にその大半をITベンダーに委託し、自社内で構築することを行ってきませんでした。そのツケが溜まりに溜まって一般企業におけるIT人材不足を起こしているのです。DXはデジタル技術を活用して改革を起こすことなので、デジタル人材が少ない日本企業でDXが進まないのは当然といえます。

 一方で、スポーツの世界では、昨今の日本人の活躍は素晴らしいものがあります。米メジャーリーグにおける大谷翔平選手の活躍は言うまでもありません。フィジカルで劣るラグビーでも日本は今やワールドカップの常連になりました。バスケットボールは、自力でパリオリンピック出場権を勝ち取るなど、多くの競技で世界に通用するようになりました。いささか乱暴ですが、ここから類推すると個々の人材の能力には、日本と米国など海外で大きな差はないと考えられます。

 日本経済はどうでしょう。国際経営開発研究所(IMD)の世界競争力ランキングによると、日本は2021年:31位、22年:34位と順位を落とし、2023年はさらに35位となりました。GDP世界3位の日本が、統計の対象になっている主要64カ国で半分以下の順位に成り下がっています。このことからも日本経済の立て直しは急務となっています。

 日本の経済の国際競争力をアップさせる方策の1つとして、DXは必須といっても過言ではありません。もし、このままDXが進まない状況が続くと、高齢化が進む日本で働き手の不足を補うことができないばかりか、デジタル化による新たなビジネスチャンスを見逃すことになり、ますます国際競争力が低下することになるでしょう。

●Next:DX人材をどう確保し、育てるか

この記事の続きをお読みいただくには、
会員登録(無料)が必要です
  • 1
  • 2
バックナンバー
架け橋 by CIO Lounge一覧へ
関連キーワード

ロート製薬 / 人材育成 / IT人材 / 製造

関連記事

トピックス

[Sponsored]

実践を通じた人材の育成がDX推進のカギ日本を代表する百戦錬磨のCIO/ITリーダー達が、一線を退いてもなお経営とITのあるべき姿に思いを馳せ、現役の経営陣や情報システム部門の悩み事を聞き、ディスカッションし、アドバイスを贈る──「CIO Lounge」はそんな腕利きの諸氏が集まるコミュニティである。本連載では、「企業の経営者とCIO/情報システム部門の架け橋」、そして「ユーザー企業とベンダー企業の架け橋」となる知見・助言をリレーコラム形式でお届けする。今回は、ロート製薬 D2C事業部 兼顧客製品情報部 システム担当マネージャーでCIO Lounge正会員メンバーの岸本 満氏からのメッセージである。

PAGE TOP