今やデータは企業にとって不可欠な第4の経営資源と目されるようになった。経営状況の分析・計画での利用のみならず、新規ビジネスの創出、最新のAIモデルの学習用途など、その活用範囲は拡大し続けている。そうした中、今後のデータ活用に不可欠となるものが、「データインテリジェンス」だ。2024年3月8日に開催された「データマネジメント2024」(主催:日本データマネジメント・コンソーシアム〈JDMC〉、インプレス)では、データ総研の小川康二氏、Quollio Technologiesの松元亮太氏が登壇し、データインテリジェンスの定義と必要性、それを実装していくためのソリューションについて解説が行われた。
提供:株式会社データ総研
今や企業経営に不可欠となったデータマネジメント
現在の企業にとって、「情報」は「ヒト」「モノ」「カネ」に続く第4の資産として、欠かすことのできないものとなっている。「この重要な資産である情報をしっかりと管理していかなければ、もはや企業経営はなり立ちません。データマネジメントは、情報の構成要素となる『データ』に着目し、適切に管理することでその価値を最大化するための活動とも言えます」とデータ総研の小川康二氏は訴える。
小川氏によると、データマネジメントの実践にあたって、不可欠な5大要素があるという。
「まず、『モノづくり』『組織作り』『ルールづくり』、これら3つを揃えたうえで、『人づくり』、そして『マスター整備』を行っていかなければなりません」(小川氏)
では、データマネジメントにおける「モノづくり」とは何をさすのか。「データマネジメントの真髄は『データ』と『メタデータ』の2種のデータを適切に管理・活用することでビジネスに貢献することにあります。つまり、これらのデータを適切に管理できる基盤づくりこそが『モノづくり』となります」と、小川氏は説明する(図1)。
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では、実際にメタデータ管理基盤を構築していくにあたっては、どのような機能が必要となるのか。小川氏は、データの「検索性」「信頼性」「統治性」の3つを挙げる。
①検索性
自分が保有しておらず、活用したいデータを入手するにあたって「それがどこにあるのか、その所有者は誰なのか、そのデータの業務上の意味合いは何か、だれに聞けば詳細が分かるのか、そして、そのデータを自分は利用できるのか」などに対する解を得られるようにすることが求められる。
②信頼性
データの最新性の担保が肝要となる。最新性の担保にあたっては、データの生成元となるシステム側の対応が必須となる一方、利用者側においても「そのデータはどの時点で生成されたものであるのか」を、しっかり管理しなければならない。せっかく入手したデータを使って分析をしても、それがすでに古いものであった場合、間違った答えを導き出してしまうからだ。
「データの信頼性を担保するには、『それがいつ更新されたのか』『どこから収集されたのか』『途中で改ざんされていないか』『どのようなロジックで計算されたのか』『不適正なデータは入ってないか』などについて把握できるようにしておかなければなりません」と、小川氏は説明する。
③統治性
メタデータの整備やデータの利活用が思うように進んでいるか、適切に管理していくことが重要となる。これらを個人任せにせず、「どこの誰がよく利用しているのか」「データ項目定義の充足度はどれくらいか」「タグの付与率は充分か」「コメントの付与率はどれくらいか」など、組織的に管理し,改善活動に繋げていかなければならない。
これからのメタデータ管理に求められる機能
これまで説明してきた機能は、メタデータ管理に必要最低限のものだ。対して小川氏は、これからのメタデータ管理にあたって、実装されることが望ましい機能、理想とするメタデータ管理基盤の姿について言及した。
1つは、システムの枠に捉われることなく、どこにどのようなデータがどのような状態で置かれているのか、すべてのデータの利用者が把握できるよう、メタデータを1カ所に集約して管理する仕組みである(図2)。
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もう1つは、メタデータを起点としたコミュニケーションの活性化とデータ関連ナレッジの蓄積を可能とする基盤の実現だ。従来、メタデータはシステム部門が管理していた。しかし、メタデータには、システム部門以外のユーザーも共有可能な、多くの有効な情報が実装できる。業務に付随する情報や有効なデータ活用方法などはその一例であり、そうしたものを蓄積してナレッジ化し、自由に活用できるようにしていくことで、企業のデータ活用の文化を強めていけるようになる(図3)。
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このほかにも、小川氏は今後のメタデータ管理基盤に求められるものとして、常にデータを最新の情報に自動更新したり、タグ付け・意味定義を自動化したりする機能を挙げた。
「これらの機能の実現を望み自社で開発しようと考えたこともありましたが、実際のメタデータ管理基盤の開発は必要とする機能が多岐にわたるため、多くの困難が伴います。そうした中で出会ったのが、Quollioでした」(小川氏)
独自のデータインテリジェンスソリューションを提供
Quollio Technologiesは独自のデータインテリジェンスソリューションを提供する、日本発のスタートアップ企業である。
「データを横断的に活用し、ビジネス価値を創出していくためには、データ基盤の整備だけでは不十分です。メタデータをいかに適切に管理していくかがこれからの時代には求められています。この課題の解決を目指し、Quollio Technologiesを創業しました」と、代表取締役を務める松元亮太氏は語る。
横断的にデータを活用することで、その価値は倍増していくが、そこでハードルとなるのが、データの発見と信頼性の担保だ。どのようなデータが利用できるのか、社内で検索することから始まり、データの意味や定義の確認、データ利用の可否判断などのプロセスを経て、実際の抽出、利用、分析を行えるようになる。こうしたデータサイエンスの一連のプロセスにおいては、90%がデータの発見・信頼性担保に費やされているのが実情だ。
この問題を解決するためにはメタデータ管理が不可欠となる。だが、メタデータ管理は想定以上に難しいものであるのが実情で、その構築プロジェクトにおいても多くの困難が伴う(図4)。
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松元氏は、「私たちが定義するデータインテリジェンスとは、メタデータを再整理、周知徹底し、データを1秒でも早く活用できる状態に保つためのテクノロジー、そしてそれを使いこなす組織的なケイパビリティです」と説明する。
このデータインテリジェンスの実現に向け、同社ではテクノロジー、およびメソドロジーの両面を提供している。例えばテクノロジーについては、メタデータの設計と運用をスムーズに行うための自動化を推進するソフトウェア機能を提供。さらにメタデータの分析環境、そしてさまざまなユーザーがメタデータを検索、活用可能とするポータルも用意しているという。
メタデータは企業によって管理したい内容が異なるため、ニーズに合わせてカスタマイズが必要となるケースがある。従来、そうしたカスタマイズではコードの記述が必要となるが、Quollioのソリューションでは、GUIによるノーコードでの実装、設計が可能だ。
また、メタデータ運用においても、これまで事業部門に依頼していたメタデータの登録に関しても、ワークフローを含めた自動化により効率化。さらに、メタデータの集計や監視機能や、検索機能もサポートしている。さらにデータリネージや品質情報、統合管理機能も提供しており、今後もさらなる機能拡張を進めていく計画だという。
「今後、データ活用のシナリオが増え、メタデータがより重要になるにつれ、管理はさらに複雑化していきます。また、データカタログは、本格的な横断メタデータ管理業務システムに生まれ変わるでしょう。そうした中で、データ活用の機動力を上げるものがデータインテリジェンスであり、私たちは企業横断データインテリジェンスの実装を支援することで、企業のデータ活用をサポートしていきます」と松元氏は訴え、セッションを閉幕した。
●お問い合わせ先
株式会社データ総研
URL: https://jp.drinet.co.jp/
問い合わせフォーム:https://jp.drinet.co.jp/contact.html
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