NTTコミュニケーションズ(NTT Com)は2024年10月2日、ローカル5G網と公衆モバイル網を自動で切り替えるSIMアプレットを開発し、技術検証を実施したと発表した。同社の「アプレット領域分割技術」を活用したSIMと組み合わせることで、人手による操作を介さずに、SIMのみで接続先の自動切り替えが可能になる。
NTTコミュニケーションズ(NTT Com)は、ローカル5G網と公衆モバイル網を自動で切り替えるSIMアプレットを開発し、技術検証を実施した。
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図1はその仕組みで、1つのSIMの中に、ローカル5G網のプロファイルと、公衆モバイル網のプロファイルを実装する。SIM内のアプレット領域に、プロファイル切り替え機能と、接続してよいエリアか、いけないエリアかをSIMが自動で判定する機能を備える。
これにより、免許交付済みのローカル5Gエリア内ではローカル5G網のプロファイルで、エリア外では公衆モバイル網のプロファイルで通信する。SIMを差し替えてネットワークを切り替えるような従来の運用をSIMが自動で制御する。
NTT Comは、ローカル5G網と公衆モバイル網を切り替えるユースケースを3つ挙げている。
- 鉄道や自動車・バスなどがローカル5Gエリアと公衆モバイルエリア間を移動するケース
- ローカル5Gシステム障害時のバックアップ回線として公衆モバイル網に切り替えるケース
- 広大な土地や物影などローカル5Gの不感エリアで公衆モバイル網に切り替えて通信持続性を継続させるケース
技術検証/有用性検証で、NTT Comは以下の要件を満たせることを確認している(図2)。
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- ローカル5G用プロファイルで、免許交付エリア(ローカル5GエリアA)のローカル5G網に接続できること
- 免許交付エリアのローカル5Gエリア外に移動すると、SIMが自動で公衆モバイル用プロファイルに切り替え、公衆モバイル網に接続できること
- 同じPLMN-ID(通信事業者の識別子)であっても免許交付エリア外(ローカル5GエリアC)のローカル5G網では電波送出しないこと(ローカル5GエリアCのローカル5G網にはRegistrationせず公衆モバイル網で接続を継続できること)
- 移動元の免許交付エリア(ローカル5GエリアA)ではない移動先の免許交付エリア(ローカル5GエリアB)エリアに入ると、SIMが自動でプロファイルを切り替え、そのローカル5G網に接続できること
「電波法およびローカル5G導入に関するガイドラインの下では、免許交付がされているローカル5Gエリア以外で端末がローカル5Gに接続しにいく(ローカル5Gの電波を発出する)ことは許されていない。通信事業者が同じでも許可されていないエリアではローカル5Gに接続しにいかないように制御する」(NTT Com)
SIMのみで接続先の自動切り替えを可能に
SIMアプレットを動作させる技術として、NTT Comは以前に「アプレット領域分割技術」を開発している。同技術を活用することで、人手による操作を介さずに、SIMのみで接続先の自動切り替えが可能になる(図3)。
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アプレット領域分割技術の実装として、メイン回線の故障時にバックアップ回線に自動で切り替えるIoT端末向けSIM「Active Multi-access SIM」を提供している(関連記事:NTT Com、IoT向けに「Active Multi-access SIM」を提供、故障時に回線を自動切り替え)。
加えて、これまで決済端末側に保存していた機微情報(個人情報や決済情報)をSIMのアプレット領域に保管する決済システムを発表している(関連記事:SIMの「アプレット領域分割技術」を小額決済端末に適用─NTT Comとアイティアクセス)。