インターネットイニシアティブ(IIJ)が2025年最初の会見で「マルチクラウド戦略」を発表した。周知のように、IIJはWIDEプロジェクトの流れを汲むインターネットテクノロジーの老舗にして牽引者なのだが、2025年1月16日の発表会でなされた説明は、技術的にも事業規模的にも「いまさら、なぜ?」の感が強かった。同社がなぜ今、マルチクラウドなのかを深読みしてみる。
2025年にもなって、なぜ「マルチクラウド戦略」なのか──。最初に取り上げたいのは、IIJの発表会で使われたプレゼンテーション資料にある「複数のクラウドを使いこなすことは難しい」(図1)だ。よく整理された図で、「なるほど、現在の情報システムはこんな風になっているのか」と、業界外の素人にも分かりやすい。
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図中の「オンプレミス」は自社運用の情報システム、「デプロイ」は「データやアプリケーションの配備・展開」を指す(デプロイ=Deployの原意は軍の配置や布陣)。
自社センターか外部委託かを問わず、自前の情報システムがWAN/LANで社内・事業所に展開しているのが20世紀型、そこにインターネット経由のX as a Service(サービスとしてのX)、つまりクラウドのIaaS/PaaS/CaaS/SaaSが重なっている。取引先もそのような状態なので、システムの運用は輪をかけて複雑になる。
一口にクラウドと言っても、AWS、Google Cloud、Microsoft Azureをはじめ、Oracle Cloud、IBM Cloud、Salesforce、Apple iCloudなどのグローバルクラウドがあり、旧国産メインフレーム系、NTT系、データセンター系のローカルクラウドもある。それぞれの特徴、長短所を理解したうえで、既存システムとスムーズに連携させたい。
説明会で示された例をなぞると、VDI/DaaSはAzure Virtual Desktop、データ分析はGoogle Cloud、AIはAzure OpenAI Services、コンテナ基盤はAWSという組み合わせだ。さらにMicrosoft 365やGoogle Workspace、SalesforceなどさまざまなSaaSを活用する。
ところが、事業部門主導などで不用意にクラウドを導入すると、デプロイ先が多岐にわたってデータ管理とガバナンスが徹底せず、アクセス経路が複雑になってセキュリティが担保できなくなるかもしれない。IT部門にとっては大いに悩ましい。その状況を示したのが前掲の図1ということになる。
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