[調査・レポート]

「DX推進指標」自己診断結果レポート2024年版、回答企業の大半が全社戦略に至らず

レベル4以上の企業は全体のわずか1%

2025年5月7日(水)IT Leaders編集部、日川 佳三

独立行政法人情報処理推進機構(IPA)は2025年5月7日、「DX推進指標 自己診断結果 分析レポート(2024年版)」を公開した。企業が提出した「DX推進指標」の自己診断結果(1349件)を分析し、日本企業におけるDXの現状や実態を把握できるようにしている。レポートによると、レベル3以上の全社戦略に基づく実施に至った企業が少なく、多くの企業は一部での散発的実施にとどまっているという。

 「DX推進指標」は、デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進状況を自己診断するプログラムである。2019年に経済産業省が策定し、経営者や社内関係者が現状を共有し、DX推進のための具体的な行動につなげるための指標として活用することを促している。

 DXの推進にあたって企業が抱える課題と解決策を明らかにするため、35項目の評価指標を設定している。各企業は自社の成熟度を、レベル0(未着手)からレベル5(グローバル市場におけるデジタル企業)の6段階評価で知ることができる(表1)。

表1:「DX推進指標」の成熟度レベル(出典:経済産業省)
成熟度レベル 特性
レベル0 未着手 経営者は無関心か、関心があっても具体的な取組に至っていない
レベル1 一部での散発的実施 全社戦略が明確でない中、部門単位での試行・実施にとどまっている
(例)PoCの実施において、トップの号令があったとしても、全社的な仕組みがない場合は、ただ単に失敗を繰り返すだけになってしまい、失敗から学ぶことができなくなる
レベル2 一部での戦略的実施 全社戦略に基づく一部の部門での推進
レベル3 全社戦略に基づく部門横断的推進 全社戦略に基づく部門横断的推進
全社的な取組となっていることが望ましいが、必ずしも全社で画一的な仕組みとすることを指しているわけではなく、仕組みが明確化され部門横断的に実践されていることを指す
レベル4 全社戦略に基づく持続的実施 定量的な指標などによる持続的な実施
持続的な実施には、同じ組織、やり方を定着させていくということ以外に、判断が誤っていた場合に積極的に組織、やり方を変えることで、継続的に改善していくということも含まれる
レベル5 グローバル市場におけるデジタル企業 デジタル企業として、グローバル競争を勝ち抜くことのできるレベル
レベル4における特性を満たした上で、グローバル市場でも存在感を発揮し、競争上の優位性を確立している

 情報処理推進機構(IPA)は、プログラムが始まった2019年から、各企業が提出したDX推進指標の自己診断結果を分析し、結果をレポートとして毎年公開している。今回、2024年1月から12月にかけて企業が提出した1349件の自己診断結果を分析し、「DX推進指標 自己診断結果 分析レポート(2024年版)」(62ページPDF)にまとめている。

 図1は、2024年の全体傾向である。DX推進の成熟度は「レベル0~レベル2未満」に偏っており、レベル4(全社戦略に基づく持続的実施)以上の企業は全体の1%とわずかである。「レベル3以上の全社戦略に基づく実施に至った企業が少なく、多くの企業は一部での散発的実施にとどまっている」(IPA)。

図1:2024年に「DX推進指標」を提出した企業における現在値の分布(出典:情報処理推進機構)
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 表2は、DX推進における現在値と目標値である。全指標では現在値が1.67、目標値が3.34で、差は1.67に上る。経営視点指標とIT視点指標も同様の差がある。

 IPAは、「企業が目標を達成するためには、『DXのための経営の仕組み』と『基盤としてのITシステムの構築』を両輪として、目標策定とアクションを実行する必要がある」と指摘している。

表2:DX推進レベルにおける現在値と目標値(出典:情報処理推進機構)
指標 現在値 目標値
平均値 中央値 平均値 中央値
全指標 1.67 2.00 3.34 3.00
経営視点指標 1.66 2.00 3.35 3.00
IT視点指標 1.69 2.00 3.34 3.00
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