日立製作所は2025年10月14日、エッジデバイスでのAI処理を省電力化するハードウェア回路技術を開発したと発表した。電源供給や設置スペースに制約のある現場でも、エッジAIによるリアルタイムデータ解析が可能になるとしている。今後、半導体を製造するパートナー企業との連携などを通じ、自社の検査装置や外観検査システムなどに実装する。
日立製作所は、エッジデバイスでのAI処理を省電力化するハードウェア回路技術を開発した。電源供給や設置スペースに制約のある現場でも、エッジAIによるリアルタイムデータ解析が可能になるとしている。今後、半導体を製造するパートナー企業との連携などを通じて、自社の検査装置や外観検査システムなどに実装していく(図1)。

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「IoT機器やセンサーの普及により、現場で発生するデータをリアルタイムで処理するニーズが高まっている。産業分野などの現場では設備の異常検知や予兆保全、フロントラインワーカーの安全性や生産性向上の需要がある。しかし、従来のエッジAIシステムは、消費電力や設置スペース、複数センサーのデータ処理に課題があり、現場への実装が進みにくかった」(日立)という状況から、この研究開発が始まったという。
日立は、今回の開発において、センサー信号を画像に変換してAIエンジンを画像認識用ニューラルネットワークの演算に最適化した回路で動作させている。また、演算の中間結果をチップ内のメモリーに格納してチップ外への書き出しを不要にし、データ移動のエネルギー削減効果を確認。さらに、これらの機能をセンサーインタフェースであるA/D変換器とともに1つのチップに集積し、コンパクトに実装している。
加えて、複数センサー(画像、音、振動など)の処理を1つの半導体チップに集積する技術を開発した。独自の低電圧・小面積アナログ回路技術を活用し、多数のA/D変換器をAIエンジンと共に1つのチップに集約。画像データだけでなく機械の振動や異音を同時に捉えて解析することで、従来は見逃されやすかった微細な異常や複合的な変化を検知できるという。
開発した回路技術を適用したAI半導体を、半導体ウェハの欠陥検出やモーターベアリングの異常検知などの作業に適用した結果、同程度の処理速度のAI半導体と比較して、消費電力を約10分の1に抑えられることを実証。合わせて、ウェハ表面に形成される微細なパターンの欠陥やベアリングの複数箇所で生じる微小なキズなど、わずかな異常を誤りなく検出できることを確認している。