矢野経済研究所は2025年10月29日、国内の従業員エンゲージメント製品市場の調査結果を発表した。従業員エンゲージメント診断・サーベイクラウドサービスの市場規模を、事業者売上高ベースで2023年は91億円、2024年は前年比122.3%の111億3000万円と推計している。2025年は前年比120.4%の134億400万円を見込む。
矢野経済研究所は、国内の従業員エンゲージメント製品市場を調査した。調査2025年5~8月の期間、国内で同分野の製品・サービスを提供しているベンダーを対象に、研究員による直接面談(オンライン含む)、電話やメールなどのヒアリング調査、アンケート調査、文献調査を併用して調査している。
図1:従業員エンゲージメント診断・サーベイクラウド市場における規模の推移と予測(出典:矢野経済研究所)拡大画像表示
図1は、従業員エンゲージメントの向上に関わる製品・サービスのうち、診断・サーベイを実施できるクラウドサービスの市場規模である。事業者売上高ベースで、2023年は91億円、2024年は前年比122.3%の111億3000万円と推計。2025年は前年比120.4%の134億400万円を見込む。
矢野経済研究所によると同市場は、2022年度(2023年3月期)決算から始まった人的資本情報の開示義務化によって活性化。その後、人的資本経営を推進する流れの中で「従業員のエンゲージメントや離職率」のデータ開示が株主などへの説明責任の一環として重視されるようになったという。
「診断・サーベイを実施する取り組みは以前からあったが、可視化した結果を具体的な施策につなげて組織を変革していた企業は一部に限られていた。多くの企業は診断・サーベイを実施しても活用方法が定まらず、継続的な改善活動に結びつかなかった」(同社)
現在は状況が変わっている。企業が実態を調べた結果から部門別の優先課題を明確化し、マネジャーへのフィードバックや1on1の実施、目標設定や育成方針の見直し、現場の声を反映した人事制度の調整など、具体的な施策を実行する動きが出てきたという。同社は次のように説明している。
「慢性的な人材不足や採用難、若手の早期離職、高齢化による属人化などの課題がエンゲージメント向上の具体的なアクションを後押ししている。エンゲージメントは『あると理想的なもの』ではなく『なければ人が定着しにくい』現実的な経営指標へと位置づけが変化している」
矢野経済研究所によると、近年では経営層主導でエンゲージメント施策を導入・実行する企業が急増しているという。同社は、クラウドサービスによって導入・運用の負荷が減っていることや、人材定着や現場活性化などの目に見える課題に直結すると考えられているからだと推察。さらに、金融機関など外部パートナーを通じた支援スキームも整っていることを指摘する。
同社は、2025年度(2026年3月期)決算において、人的資本情報の開示コンテンツとしてエンゲージメントスコアを開示する企業は引き続き増えるという見方を示す。
「上場企業以外でも、離職防止や人材定着の観点からエンゲージメントスコアを測定し、組織改善に取り組む企業は増加する見通しだ。ただし、2024年同様、タレントマネジメントシステムなどとの競合があることから、同市場規模は前年比120%程度の伸びになると見込んでいる」(同社)

































