[市場動向]
NTTとNTTドコモ、4W1Hデータから顧客ニーズを予測する「大規模行動モデル(LAM)」を構築
2025年11月13日(木)IT Leaders編集部、日川 佳三
NTTとNTTドコモは2025年11月12日、オンラインや店舗などの顧客接点から得られる4W1H形式の時系列データを基に顧客のニーズを予測するAI技術「大規模行動モデル(LAM:Large Action Model)」を構築し、検証結果を発表した。一人ひとりのニーズに応じた1to1マーケティングを支援する。検証では受注率2倍向上を確認したという。
NTTとNTTドコモは、オンラインや店舗などの顧客接点から得られる4W1H(だれが/いつ/どこで/何を/どうした)形式の時系列データを基に顧客のニーズを予測するAI技術「大規模行動モデル(LAM:Large Action Model)」の実用化に取り組んでいる(図1)。
図1:大規模行動モデル(LAM)の概要(出典:NTT、NTTドコモ)拡大画像表示
「顧客一人ひとりのニーズに合わせて提案する1to1マーケティングにおいて、より精緻な顧客理解が求められている。しかし、顧客接点から得られる時系列の行動データから顧客のニーズを把握するのは難しい」(両社)。アプリの操作履歴や店舗での購入商品など、顧客接点ごとにデータの頻度や形式が異なり、これらのデータの統合に困難を抱える企業が多いという。
NTTドコモは、顧客接点データを4W1H形式の時系列データに変換する「CX分析基盤を開発している。一方のNTTは、時系列データから行動順序のパターンを学習・予測するLAMを持つ。これらを組み合わせ、NTTドコモにおいて独自のLAMを構築している(図2)。
図2:大規模行動モデル(LAM)の概要(出典:NTT、NTTドコモ) LAMの計算コストを、設計とパラメータの工夫によって削減し、実際のマーケティング事例に適用できるようにしている。総計算量は145GPU時間(事前学習:132GPU時間、追加学習:13GPU時間)で、これはNVIDIA A100 40GBの8基構成で1日分に満たない計算に相当するという。事前学習では顧客の「どうしたい」を予測するためのパラメータを、追加学習では販促施策を個別化するためのパラメータを調整している。
検証では、顧客ごとのニーズとテレマーケティングの必要性をスコア化し、必要性が高いと判断した顧客に優先的に提案するケースの効果を測った。
提案した顧客へのヒアリングから、「店舗での手続きを希望しながらも育児などで来店が難しかった顧客」や「料金プランの変更に迷っていた顧客」などに対し、適切なタイミングで案内できたことを確認。検証結果として、モバイルやスマートライフ関連サービスの受注率が従来比で最大2倍に向上したという(図3)。
図3:大規模行動モデル(LAM)をマーケティングに応用した事例の概要(出典:NTT、NTTドコモ)拡大画像表示
LAMは、大規模言語モデル(LLM)に類似した構造を持ち、Transformerベースのアーキテクチャで将来の行動を予測する。行動の順序に応じた意味の違いを理解することができる。
図4は、行動の順序によって意味が異なるケースを図示したものだ。「テレマーケティングを行ったら、顧客が商品ページを閲覧し購入してくれた」場合、テレマが商品の認知を促進したと考えられる。「商品の閲覧後にテレマーケティングを行ったら顧客が購入してくれた」のなら、テレマが商品への関心を深めたと考えられる。LAMは、このような行動の持つ意味を見分けて顧客の需要を予測する。
図4:行動の順序によって意味が異なる例(出典:NTT、NTTドコモ)拡大画像表示

































