[架け橋 by CIO Lounge]

変革の主語はシステムではなく、人である

JTB 常務執行役員 CIO/CISO 黒田恭司氏

2026年9月9日(水)CIO Lounge

日本を代表する百戦錬磨のCIO/ITリーダー達が、一線を退いてもなお経営とITのあるべき姿に思いを馳せ、現役の経営陣や情報システム部門の悩み事を聞き、ディスカッションし、アドバイスを贈る──「CIO Lounge」はそんな腕利きの諸氏が集まるコミュニティである。本連載では、「企業の経営者とCIO/情報システム部門の架け橋」、そして「ユーザー企業とベンダー企業の架け橋」となる知見・助言をリレーコラム形式でお届けする。今回は、JTB 常務執行役員 CIO/CISOでCIO Lounge正会員メンバーの黒田恭司氏からのメッセージである。

コロナ禍は「これまでの常識を見直す機会」に

 私は2023年にJTBに入社し、CIO/CISOとしてデジタルトランスフォーメーションの推進を担っています。その前は30年以上にわたり日本IBMに在籍し、システム開発やプロジェクトマネジメント、サービス事業、クラウド変革、人材育成など、多くの仕事に携わりました。

 振り返ると常に私のキャリアの中心にあったのは、「テクノロジーそのもの」ではなく、「変化を実現すること」だったように思います。それはどういうことか、現在、JTBで進めている仕事を紹介しながら説明します。

 さて、2020年に世界を大混乱に陥れたコロナ禍は、まだ記憶に新しいところでしょう。旅行業界は甚大な打撃を受け、JTBも存亡の危機と言える状況でした。このような中で、私は危機への対応を、単に業績回復に向けた取り組みとして捉えるのではなく、「これまでの常識を見直す絶好の機会」と考えました。

 多くの企業がDXを推進していますが、実際には「既存業務のデジタル化」で終わってしまうケースが少なくありません。その大きな理由の1つが、システム刷新や新しいデジタル技術の導入自体が目的になってしまうことです。DXとは本来、デジタル技術を活用してビジネスモデルや組織文化そのものを変革する活動です。その上で事業を変えることが目的でなければなりません。

 そこで入社以来、私は「ビジネス・組織・システムは三位一体で変えなければならない」と、繰り返し伝えてきました。組織を変えても、支えるデジタル基盤がなければ持続性が生まれません。最新のシステムや評判のツールを導入しても、組織や意思決定の仕組みが変わらなければ成果は限定的です。どれか1つだけでは変革は成立しないのです。

●Next:DXは単なるシステム導入ではなく組織全体の挑戦

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