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[製品サーベイ]

知って得するIT関連税制─利用の幅が広がる「情報基盤強化税制」を十分に理解し、活用すべき

製品サーベイ 第2回

2008年11月20日(木)IT Leaders編集部

積極的なIT投資の促進を目的とした「情報基盤強化税制」。対象となるIT設備を購入すれば税制上の優遇措置を受けられる。今年3月まで2年間実施したものの十分な投資効果が得られず、内容を改定して適用期間を2年間引き延ばした。特に取得価格が引き下げられたことで中小企業が税制を利用しやすくなっている。内容を理解して積極的に活用したい。

「情報基盤強化税制」──。聞き慣れない言葉かもしれないが、ぜひ理解しておきたい制度だ。というのも、企業もしくは個人事業者がIT設備を購入した際の価格に対して、減税措置を受けられるからである。

欧米に比べると、国内のIT投資は伸び悩んでいるのが現状だ。そこでカンフル剤として税制上の優遇制度を設け、ITに対する企業の積極投資を後押しする。業務の生産性向上や情報共有、セキュリティ強化などを促進して国際競争力の強化を目指す。

2年間の延長が決まる

実はこの制度は、2006年(平成18年)4月1日〜08年(同20年)3月31日までの時限措置として実施してきたが、一部内容を改正して10年(同22年)3月31日まで延長となった。

財務省は本税制を施行した2年間の減収額を06年度は1000億円、07年度は1070億円と試算。この数字を見る限り税制による一定の効果はあったと考えられるものの、企業の実際のIT活用レベルは例えばIT先進国の米国にまだ水をあけられていると見る向きは多い。経済産業省が実施したアンケートでは、企業内で部門を越えて情報システムを活用している割合は、米国の41%に対して日本は24%にとどまる。減税措置を2年間延長した背景には、IT投資の水準を少しでも高めたいとの狙いがある。

中小企業のIT投資も低調で、経産省の発表では資本金1億円以下の企業1社あたりのIT投資額の伸び率は2000〜04年で0.7%。全体(7.8%)に比べて格段に低い。こうした理由から、中小企業の需要を喚起しやすい内容に税制は改正された。

ISO認証製品が条件となる

情報基盤強化税制の概要を表1にまとめた。注意すべきは2点。まず、対象資産については、どんな製品を購入してもよいわけではない。OSやデータベース管理ソフト(DBMS)、ファイアウオール製品は、「ISO/IEC15408」というセキュリティ国際基準の評価・認証を受けたものに限られる。ただし、ISO/IEC15408認証製品と合わせてサーバー機やDBMSの機能を利用するアプリケーションを購入する場合は、これらの取得価格も減税対象となる。

表1:情報基盤強化税制の概要
対象企業 青色申告を行うすべての企業、業種
対象資産 2006年4月1日から2010年3月31日までの期間内に取得などを行う以下の設備
(1)サーバー用OS※1、当該OSがインストールされたサーバー機
(2)データベース管理ソフトウエア(DBMS)※1、DBMSおよびこの機能を利用するアプリケーションソフトウエア
(3)連携ソフトウエア※2
(4)ファイアウオール※1 (1〜4のいずれかと同時に設置されたものに限る)
措置内容(A、Bから選択) A:基準取得価格(取得価格の70%)に対する10%の税額控除
B:基準取得価格(取得価格の70%)に対する50%の特別償却
取得価格要件 資本金1億円以下の法人など、個人事業者 70万円以上
資本金1億円超〜10億円以下の法人 3000万円以上
資本金10億円超の法人 1億円以上(上限200億円)
※1 ISO/IEC15408に基づいて評価・認証されたもの ※2 情報処理の促進に関する法律第3条第1項に規定する電子計算機利用高度化計画(平成20年経済産業大臣告示第61号)において定められたプログラムとしてIPAにより技術上の評価を受けたもの


 

次に措置内容については、税額控除か特別償却の選択適用となる。対象設備を購入した場合、基準取得価格(取得価格の70%)の10%が税額控除、あるいは50%が特別償却として利用できる。5000万円の設備を導入すれば、税額控除は350万円、特別償却は1750万円となる。税額控除では法人税額の20%を限度として税金を減額できる。特別償却は減価償却費として普通償却限度額に加算して償却できる。利益を減らすことで税金を減らす仕組みだ。

税額控除と特別償却のどちらを選択すべきかは企業の事情による。税額控除は支払う税金を減らせるが、売り上げが少なかったり、赤字だったりする場合は節税効果は小さい。特別償却は2年目以降の減価償却費を初年度に繰り延べているにすぎないが、税負担軽減によりキャッシュフローを増やせる。

改正で対象広げるも複雑さ増す

情報基盤強化税制の今年4月の改正では、中小企業のIT投資拡充に重きを置いた。

これまで資本金1億円以下の法人や個人事業者の取得価格の最低限度は300万円以上だったが、70万円以上に引き下げた。ISO/IEC15408対象となる機器の価格が安くなっていることもあり、「70万円以上」としたことで税制を利用する敷居は格段に低くなった。

部門間や企業間で分断されている情報システムの連携を強化するため、連携ソフトウエアを新たに対象製品として追加したことも着目点だ。大企業の部門間や中小企業においてSOAなどのミドルウエア浸透を後押しする。連携ソフトウエアはISO/IEC15408認証製品が対象ではなく、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)に技術上の評価を受けたものが適用対象となる。

ただし、複数の製品を組み合わせて導入した場合など、減税の対象範囲の判断は一筋縄ではいかない場合があるので、関連資料に細部まで目を通ることが求められる。

国際基準で比較できる

ここで、税制対象となる製品の評価、認証を行うISO/IEC15408制度について解説しよう。これはIT製品が適切に設計され製品化されているかの評価基準を規格化しているものだ。認証された製品は相互承認協定(コモンクライテリア)加盟国(08年7月現在、25の認証国・受入国)で認証の効力を持つ。つまり、国外でISO/IEC15408認証された製品を購入しても情報基盤強化税制の適用を受けられる。

ISO/IEC15408制度のメリットは、国際基準の下で製品のセキュリティ能力を比較できること。導入前に必要なセキュリティ機能を確認でき、適正なコストで環境に合った製品を選択できる。

ISO/IEC15408認定を受けたOS、DBMS、ファイアウオール、および連携ソフトウエアの主要製品をまとめた(表3-1、表3-2)。税制対象製品を確認する上で注意点は「製品のバージョン」と「保証レベル(EAL)」である。

表3-1 情報基盤強化税制の対象となる主要製品一覧(OS、連携プログラム製品)

表3-2 情報基盤強化税制の対象となる主要製品一覧(ファイアウオール、データベース製品)

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