新たな価値は生まないが、導入して更新料を支払う必要がある、いわば「税金」のようなもの──。それがウイルス対策ソフトウェアだ。少し前まではシマンテック、トレンドマイクロ、マカフィーという大手3社の寡占状態だったが、今や選択肢は多い。決して安くない利用料だけに、適宜、見直す必要がありそうだ。
新種のウイルスがどれくらいの頻度で出現しているか、ご存じだろうか。トレンドマイクロによると「2.5秒に1件の割合」だという。最近でもUSBメモリー経由で感染するウイルス「Downadup.B」が発見された。アクセスするだけで、ウイルスを取り込ませる仕掛けを持つWebサイトも複数確認されている。
こうしたウイルス対策に必須なのが、対策ソフトである。ウイルスの発生をすかさず感知し、対策ソフトに反映して配信するだけの技術力と体力が必要であるだけに、少し前まではシマンテック、トレンドマイクロ、マカフィーという、大手3社による寡占市場だった。多くの企業や個人が、このうちいずれかの製品を導入しているはずだ。
だが、ここへ来てロシアやアジアなど新興国のベンダーによる製品が増えている。多くが軽快な動作や、利用料金の安さを武器にする。ウイルス対策ソフトには「(初期ライセンス費用+毎年の更新料)×パソコンの台数」の費用がかかるだけに、厳しい経済環境下で見直すべきITコストの1つと言えるだろう。
一方で「安かろう、悪かろう」では意味がないことも事実。そこで今回はウイルス対策ソフト26製品を調べた。
Check 1
ウイルス検知性能と動作の軽快さが焦点に
ウイルス対策ソフトが「パターンファイル」を使って、ウイルスを検知することは広く知られている。ウイルスのコンピュータ・プログラムを収集・分析して、特徴的な箇所(パターン)をリスト化。このリスト(パターンファイル)をクライアント機に配布し、同じパターンを持つプログラムがないかどうかを検出する。
ここで、パターンファイルのサイズやパターンマッチング(ウイルス検出)に要する時間、そしてパターンファイルを配布する頻度が問題になる。クライアント機の動作に悪影響を及ぼしかねないのだ。このため最近では、軽快に動作することや、パターンマッチングとは別の検知機能を売り物にする製品が増えている。
その1つが「ESET スマート セキュリティ」。本体やパターンファイルが小さく、高速のスキャンが特徴だ。パターンファイルが存在しないウィルスに対し、その挙動をもとに判別するヒューリスティック機能も備える。「ウィルスチェイサー」や「G DATAインターネットセキュリティ2009」も、動作の軽快さと検出力の両立をアピールする。
一方、トレンドマイクロの「Trend Micro Client/Server Suite Premium」は、不正なWebサイトへのアクセスをブロックする「Webレピュテーション」機能を備える。そのドメインから大量のスパムメールが配布されているか、不正なプログラムを置いているかなどを判断基準として、アクセスそのものを禁止する仕組みだ。
ただし、ヒューリスティック機能やWebレピュテーション機能は、正規のソフトやサイトを排除してしまう危険もあることは知っておきたい。
パターンファイルの更新を高頻度で
どんなに軽快に動作しても、ウィルスを見逃すようなことがあっては本末転倒である。この点に磨きをかけ、通常は1日1回程度のパターンファイルの更新頻度を高めることで、新種のウイルスに対応しようとする製品もある。
「Kaspersky Internet Security 2009」がそれで、実に約45分に1回の頻度でパターンファイルを更新する。「Kaspersky Open Space Security」はその企業向け製品である。とはいえ、更新回数を増やすとネットワークはもちろん、クライアント機に負荷がかかり、通常業務に支障を来しかねない。この点については「パターンファイルのデータ量を抑えるように工夫して、負荷低減を図っている。実用上、問題があるという話はない」(カスペルスキーラブスジャパン エンタープライズ事業部の前田典彦部長)という。
●Next:ウイルス対策運用を自動化する管理機能、複数製品の使い分け
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