第1章で、BPMはどういったものなのか、どのように企業経営に寄与するのか、その概略はおわかりいただけたことと思います。第2章ではさらにBPMを詳細に見ることで、筋肉質で俊敏な企業になるためのBPMの重要性を理解していただきたいと思います。まず、何を持ってビジネスプロセスと呼ぶのかを理解していただきます。次にBPMとは何か、企業に何をもたらすものかを業務改善とリスク・マネジメントの視点から考えます。そして継続的なBPMを可能にするための「評価とモニタリング」の重要性についても考えていきます。
1.ビジネスプロセスとは
まずはビジネスプロセスですが、「業務を遂行するための一連の作業」のことです。では一連の作業とは何か?皆さんがお客様から注文をいただいた場面を想定してください。どのような作業を行っていますか?
- A.お客様から注文書をいただく。+お客様に注文確認書を送る
- B.社内で商品の手配と発送の手続きを取る。
- C.お客様に納品書をお送りする。
- D.お客様に商品が届き検収していただく。
- E.社内で売り上げ計上の手続きを取る。
- F.お客様に請求書をお送りする。
- G.お客様からの入金を確認する。
皆さん自身が行うか他の部署の人が行うかは別として、一般的にはA〜Gのような順序の作業を行っていると思います。このひとまとまりの作業は、企業によっては多少の違いはあるかもしれませんが、1つの企業内では同じやり方をしているはずです。これは「業務を遂行するための一連の作業」として捉えることができます。つまりビジネスプロセスと言うことができるものです。
では注文をいただく前の営業活動について考えてみましょう。どのような作業をするでしょうか?
- イ.お客様の経営状況、事業内容などをインターネットなどで調べる。
- ロ.お客様のどの部署、どの人へアプローチするか考える。
- ハ.社内でのお客様へのアプローチ実績を調べる。
- ニ.アプローチ先のお客様を紹介してもらえる知り合いがいないか調べる。
- ホ.お客様とアポイントを取る。
- へ.お客様と面会しお客様のニーズを探り出す。
- ト.お客様へのニーズに合う商品の提案を作り提出する。
以上のような作業がなされているのではないでしょうか。ではこれらイ〜トの営業活動の作業はビジネスプロセスなのでしょうか?
みなさんは、「これは人によってやらない作業があったり、順番も違うかもしれないからビジネスプロセスとは言えない」と考えるかも知れません。しかし皆で営業活動の作業をこの順でやるように決めたとしたらどうなるでしょうか。「無理に順番を決めてもビジネスプロセスとは言えないのでは」という疑問も出るでしょう。
しかし注文をいただいてからの作業A〜Gの受注処理にしても「E.社内で売り上げ計上の手続きを取る。」と「F.お客様に請求書をお送りする。」の順番は入れ替わっていたり同時並行であってもかまわないものです。つまり「業務を遂行するための一連の作業」であればビジネスプロセスと呼んで差し支えないことになります。
こうしてみると、皆さんの企業における業務は皆さんがそれを意識しているかいないかにかかわらず、ビジネスプロセスの塊と言えることになります。
しかしここで受注処理と営業活動の違いに気がついていただけたでしょうか。
受注処理は一部の作業を他の担当者や他部署に依頼するでしょうし、依頼した作業の結果をもって次の作業にかかる一方、営業活動はほとんど自分で完結する形で作業が進められます。つまり受注処理のようなビジネスプロセスでは順番、作業のやり方が人によって異なっていると社内で混乱を来たしてしまいます。一方営業活動は個人の創意工夫が多くを占めるビジネスプロセスと言えます。
一般に皆さんの企業では大多数のビジネスプロセスは特定の個人だけで完結するものではなく、他者や他部署との関わりで進めるものではないでしょうか。このように「業務を遂行するための一連の作業」であるビジネスプロセスを適切に動かすことは企業活動の効率に直接関わってくることになります。
本コラムは、ビジネスプロセス革新協議会(BPIA)で活動するビジネスプロセスマネジメント(BPM)研究会のメンバーが協力して執筆しました。BPIAは、次代の企業にふさわしい組織・業務革新の「あるべきモデル」「導入活用定着手法」を究明し、企業競争優位性の確立とビジネスの生産性向上を目指して1999年に設立されました。また、BPM研究会はITベンダー、ITコンサルタント会社、ユーザー企業で実際に業務革新に取り組んできた専門家が、最も効果的/実践的な業務革新の手法を探求しているグループです。
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